イベント

国際シンポジウム2017年度

シンポジウム名:「パリ協定発効後の脱炭素化の見通し」

日時:2018年2月8日(木) 14:00-18:00 (受付開始 13:30)
会場:東京大学本郷キャンパス 福武ラーニングシアター(福武ホール地下2階)
参加費:無料
言語:日本語・英語(同時通訳あり)
主催:東京大学公共政策大学院(GraSPP)、国際石油開発帝石株式会社(INPEX)
共催:(一財)日本エネルギー経済研究所(IEEJ)

開催報告

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2018年2月8日(木)、福武ラーニングシアターにおいて、「パリ協定発効後の脱炭素化の見通し」と題する国際シンポジウムを開催しました。本シンポジウムは、東京大学公共政策大学院において2010年4月より開講されている国際石油開発帝石㈱(INPEX)の寄付講座「エネルギーセキュリティーと環境」の一環として開催されたものであり、エネルギー産業及び政策関係者、研究機関、東大関係者を中心に、約160名の方々にご参加いただきました。

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黒田 直樹
国際石油開発帝石株式会社 相談役

開会挨拶において、寄付講座開設者であるINPEXの黒田 直樹 相談役より、「パリ協定の下で各国が提出している排出削減目標の約束草案(NDC)を集計してみると、パリ協定の目標と大きな乖離があることが分かり、各国は、経済や雇用に対する影響とエネルギー安全保障、コスト負担、技術革新など様々な要素を考慮しつつ、排出削減目標とのギャップを埋めていくために努力をしていくだろう。これらの点を含めて議論していただきたい」と、本テーマにおける議論の指針をお示しいただきました。

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Ms. Laura Cozzi
Head of Energy Demand Outlook Division, World Energy Outlook, International Energy Agency
秋元 圭吾
(公財)地球環境産業技術研究機構(RITE) 主席研究員

シンポジウムでは、まず国際エネルギー機関(IEA)のLaura Cozzi エネルギー需要展望部長が「World Energy Outlook 2017」に関する基調講演を行い、エネルギー部門のパリ協定署名後の行動見通し、パリ協定の目標と整合的な温室効果ガス削減、エネルギーアクセス、大気汚染防止の同時達成を目指す持続可能な開発シナリオ(SDS)の考え方及びそのための投資ニーズ等についてお話いただきました。

続いて、地球環境産業技術研究機構(RITE)の秋元 圭吾 主席研究員が「不確実性下における長期大幅削減戦略」と題する基調講演を行い、長期の目標と気候感度を含む様々な不確実性の下での排出経路、緩和費用、異なる社会経済像の下でとるべき対策の差異、SDGsシナリオのコベネフィットとトレードオフとの関係、イノベーション創出について詳細に解説していただきました。

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末広 茂
(一財)日本エネルギー経済研究所(IEEJ) 研究主幹

基調講演の最後として、日本エネルギー経済研究所(IEEJ)の末広 茂 研究主幹に「超長期の気候変動分析」と題して、温暖化対策コストを緩和のみならず適応、損害も含めた上で、2050年世界排出量半減ケース、緩和・適応・損害の総コスト最小化ケース、2度目標コスト最小化ケースをご紹介いただきました。

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有馬 純
東京大学公共政策大学院 教授
Dr. Oliver Geden
Head of EU/Europe Division, German Institute for International and Security Affairs

後半では、有馬 純 本院教授がモデレーターを務め、パネルディスカッションを行いました。長期シナリオに関して上記3名の基調講演者による異なるアプローチも踏まえつつ、パネリストにOliver Geden ドイツ国際安全保障研究所(SWP) EU欧州調査部長と基調講演者を迎えて、それぞれの長期シナリオについてのコメントや会場参加者からの質疑を含め、多様な視点から活発な議論が展開されました。

シンポジウムの総括として、有馬 純 教授が、「気候変動対策においては、長期のビジョンを持つ必要がある。しかし、大きな不確実性ゆえに、厳格なアプローチをとると長期的な取組に対する政治的社会的受容性が下がってしまう可能性がある。そこで、大事なことは不確実性の中で大きな方向性は変えずに、状況に合わせた柔軟な対応をとっていくことではないか。また、気候変動対策がSDGsの1つの目標であることを忘れてはならず、目標間のプライオリティや他の政策目的との衝突関係などを考える必要がある。本シンポジウムは、長期戦略を考える上で留意すべき事項を浮かび上がらせた点で意義深いものであった」との発言がありました。

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飯塚 敏晃
東京大学公共政策大学院 院長

最後に飯塚 敏晃 本院院長から、「長期の脱炭素化について濃い議論ができた。本シンポジウムが参加者への示唆となったことを願う。エネルギー温暖化問題は公共政策大学院で重要な位置づけを有するテーマであり、今後ともこの分野での教育、研究を強化したい」旨の閉会の挨拶があり、シンポジウムは盛会のうちに終了いたしました。

本シンポジウムにご参加、ご後援いただいた皆様に厚く御礼申し上げます。

開催趣旨

パリ協定後の世界及び脱炭素化の見通しについては依然として様々な不確定要素があり、企業の経営・投資判断を難しいものにしている。こうした中で、パリ協定後の国際情勢、低炭素化にむけた各国の政策動向、脱炭素化に向けた技術動向、投資環境などを通して、日本のエネルギー政策や企業戦略の在り方に関するインプリケーションを抽出する。

プログラム

14:00-14:10 開会挨拶
黒田直樹 国際石油開発帝石株式会社 相談役
14:10-14:50 基調講演1
Ms. Laura Cozzi, Head of Energy Demand Outlook Division, World Energy Outlook, International Energy Agency
参考資料PDF (510KB)
14:50-15:30 基調講演2
秋元 圭吾 (公財)地球環境産業技術研究機構(RITE) 主席研究員
参考資料PDF (2.8MB)
15:30-16:10 基調講演3
末広 茂  (一財)日本エネルギー経済研究所(IEEJ) 研究主幹
参考資料PDF (614KB)
16:10-16:30 休憩
16:30-17:30 パネルディスカッション
モデレーター:
有馬 純 東京大学公共政策大学院 教授


パネリスト:
Ms. Laura Cozzi (IEA)
秋元 圭吾 (RITE)
末広 茂 (IEEJ)
Dr. Oliver Geden, Head of EU/Europe Division, German Institute for International and Security Affairs


17:30-17:55 質疑応答
17:55-18:00 閉会挨拶
飯塚 敏晃 東京大学公共政策大学院 院長
ポスターPDF(2.17MB) PDF