対外政策決定論
担当教員
配当学期・曜日・時限
夏学期 火曜 3限
内容・進め方・主要文献等
グローバライゼーションの進行する世界情勢を踏まえて、初めに当事国の国際的地位や国際関係のあり方、アクターの範囲の違いに伴う対外政策決定過程の性格等を概観する。また基本方針との関係を基準にして争点領域のタイプを分け、それぞれについて情報収集、分析能力、利害状況、政治的リーダーシップおよび政策目標の設定、実施体制および政策手段の選択、国内での支持調達、外交交渉のソフトパワーなどに注目しながら、対外政策決定上の各要素を検討する。日本の例に限らず、国際比較、特にアメリカの場合を参照することにしたい。イラク戦争は改めて首脳個人の役割の大きさを浮き彫りにしており、その長短を検討することが対外政策の決定に関しても新たな課題として浮上している。
講義は次のような構成にする予定である。
一.イントロダクション 二.対外政策の決定理論
三.対外政策の政治過程―内政構造・国際的地位・外交スタイルの諸タイプとタイプ間の連関
四.世界情勢の構造と安全保障の争点領域
五.アメリカ型対外政策とソフト・パワー 六.日本の対外政策
七.二次元ゲーム論 八.トランスナショナルな政治空間
九.国際協調と多国間外交 十.対外政策過程の多元化
十一.イラク戦争の政策決定過程
なお、講義は演習形式で行い、15人程度の参加を予定している。参加希望者は希望理由をA4で1枚にまとめて最初の時間に提出のこと。
授業計画
グローバリゼーションの進行に伴って、国益を目標に掲げる対外政策の性格も変容している。当事国の国際的地位や国際関係のあり方、外交スタイル、内政との関係といった構造的な性格の違いに基づく対外政策決定過程のタイプ等を概観したうえで、対外政策の基本的な要素である情報収集、分析能力、利害状況、政治的リーダーシップ、および政策目標の設定、および実施体制、政策手段の選択、国内での支持調達、外交交渉のソフト・パワーなどに焦点を当てながら、対外政策の変容を検討する。日本の例に限らず、国際比較、特にアメリカの場合を参照することにしたい。
1. イントロダクション 「国益」とは何か? 対外政策の「決定」とは何か?
予習文献 坂本義和「レーゾン・デタ」『政治学辞典』(平凡社 1954年)、1389-91ページ。
2. 対外政策の決定理論
予習文献 @佐藤英夫『対外政策』(東京大学出版会 1989年)、序章、第一、二章。
A草野厚『政策過程分析入門』(東京大学出版会 1997年)第五、七章。
参考文献 グレアム・T・アリソン(宮里政玄訳)『決定の本質―キューバ・ミサイル危機の分析』
(中央公論社 1977年)。
2. 対外政策の政治過程―内政構造、国際的地位、外交スタイルの諸タイプとタイプ間の連関
予習文献 五十嵐武士「内政と外交という視座」『日米関係と東アジアー歴史的文脈と未来の構想』(東京大学出版会 1999年)第三章第三節。
参考文献 草野 前掲書(1997年)111-119ページ。
4. 世界情勢の構造と安全保障の争点領域
予習文献 @五十嵐「安全保障論の転換」磯村早苗・山田康博編『いま戦争を問うー平和学の安全保障論』(法律文化社 2004年)第一章。
A山本吉宣『「帝国」の国際政治学―冷戦後の国際システムとアメリカ』(東信堂 2006年)第3,4,5章。
5. アメリカ型外交とソフト・パワー
予習文献 @西崎文子「歴史的文脈―ウィルソン外交の伝統」五十嵐編『アメリカ外交と21世紀の世界』(昭和堂 2006年)3-31ページ。
A山本 前掲書 第9,10,11章。
参考文献 @五十嵐「アメリカ型外交と冷戦」『日米関係と東アジア』第三章第一節。
Aジョゼフ・S・ナイ(山岡洋一訳)『ソフト・パワー―21世紀の国際政治を制する見えざる力』(日本経済新聞社 2004年)。
6. 日本の対外政策
予習文献 @信田智人『官邸外交―政治リーダーシップの行方』(朝日選書 2004年)。
参考文献 @信田『冷戦後の日本外交―安全保障政策の国内政治過程』(ミネルヴァ書房 2006
年)
A五百旗頭真編『戦後日本外交史』(有斐閣 1999年)。
7. 二次元ゲーム論
予習文献 @Robert Putnam, “Diplomacy and Domestic Politics : The Logic
of Two-Level Game,” International Organization, Vol.42 No.3(Summer 1988),
pp.427-460.
A草野 前掲書126-130ページ。
参考文献 Peter B. Evans, et. al., eds., Double-Edged Diplomacy: International
Bargaining and Domestic Politics(University of California Press,1993)
8. トランスナショナルな政治空間
予習文献 @五十嵐「太平洋世界の形成と東アジアの民主化」同編『太平洋世界の国際関係』
(彩流社 2005年)第一部第二章。
A草野 前掲書(1997年)119-126ページ、付録「相互浸透モデルによる分析事例」。
参考文献 草野厚『日米オレンジ交渉』(日本経済新聞社 1983年)。
9. 国際協調と多国間外交
予習文献 @I・W・ザートマン『多国間交渉の理論と応用―国際合意形成へのアプローチ』
(慶応義塾大学出版会 2000年)。
A飯田敬輔「先進国間のマクロ国際協調―国際公共財理論の立場から」草野厚・梅本哲也編『現代日本外交の分析』(東京大学出版会 1995年)第一〇章。
参考文献 @船橋洋一『通貨烈々』(朝日文庫 1992年)。
A遠藤保雄『戦後国際農業交渉の史的考察―関税交渉から農政改革交渉への展開の
社会経済的意義』(お茶の水書房 2004年)。
10. 対外政策過程の多元化
参考文献 @目加田設子『地雷なき地球へー夢を現実にした人びと』(岩波書店 1998年)
A足立研機『オタワプロセスー対人地雷禁止レジームの形成』(有信堂 2004年)
11.アメリカの帝国化
予習文献 @五十嵐「アメリカー『テロとの戦争』と国内の支持」五十嵐編 前掲書 237-95ページ。
A小野沢透「米・中東関係―パクス・アメリカの蜃気楼」五十嵐編 前掲書 129-73ページ。
参考文献 @ボブ・ウッドワード(伏見威蕃訳)『ブッシュのホワイトハウス』上下(日本経済新聞社 2007年)
Aジョン・J・ミアシャイマー、スティーヴン・M・ウォルト(副島隆彦訳)『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』(講談社 2007年)
教材等
@ 佐藤英夫『対外政策』(東京大学出版会 1989年)
A 五十嵐武士『アメリカ外交と二一世紀の世界』(昭和堂 2006年)ほか。
成績評価の方法
学期中の小テストおよび学期末の試験による。