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東京大学公共政策大学院 | GraSPP / Graduate School of Public Policy | The university of Tokyo

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GraSPP入学で得た天・地・人~修了から10年を迎えるにあたり~

Masaru Sunohara (from Japan) Class of 2009

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今年の春で私が終了して10年、働き始めて10年という一区切りとなる。ここでこの10年強を簡単に振り返ると共に、下記の内容がお読みいただく皆様の一助となれば幸いである。

1.GraSPP入学まで

私は、2003年に東京大学文科Ⅲ類に入学した。入学当時は母が大学の地理学科出身だったことも影響して、人文地理を勉強したいと漠然と考えており、「公共」とはまったく縁がなかった。
一つのきっかけは、3年夏時、情報学環教育部から応募したあるTV局でのインターンシップである。当時の私はTV報道に関心を抱いていて、2年冬からの進学先をメディア業界に人脈が広い文学部の社会学専修課程に選び、情報学環教育部でも学びながら進路選択を少しずつ考え始めていた。私は、将来の職業選択を意識してインターンシップに参加し、TV業界のダイナミックな動きには感銘を受けた。しかし、インターンシップが終わってふと振り返ると「自分が働くイメージがなかなか持てない」という感想を抱いた。また同時に、元々大学院でも学びたいとも考えていたので、研究者の道を目指すことにも意識を向けてみたが、どうしても研究を職業とすることに具体的なイメージが湧かず、TV業界でも研究者でもない進路はないかと模索を始めた。
その時、偶然GraSPPの先輩のブログの存在を知り、GraSPPのHPと共に閲覧を始めた。一見自分にとって縁がないような「公共」の世界ではあったが、実はその当時私の父は現役の国家公務員であり、考えてみれば身近な存在だった。父と話すにつれ、「公に貢献する仕事も面白いかな」と少しずつ考えるようになり、進学先をGraSPPと決めた。その理由は、GraSPPの学際的かつ実践的なカリキュラムである。そのことは、先輩のブログにも書かれており、それまで全く「公共」に縁もなく知識もなかった私にはうってつけと考えたのである。

2.入学してから職業選択まで(学び)

こうして、2007年4月私は、GraSPPの門を叩いた。しかし、そこから始まった生活は私の想像以上に「きつい」毎日だった。そもそも、GraSPP入学前に満足に法律も経済も勉強した経験がなかった上に、1年夏学期は公務員試験の勉強を始めたことと重なり、自分は大学院を甘く見ていたと痛感した。しかし。「きつい」とは感じたが、決してネガティブな感情は起きなかったし、振り返ると自分はとても楽しんで学生生活を送っていたと思う。また、そうした過程で少しずつ知的体力を養われていったと感じている。
特に、実務家の先生の授業では予習量が多かったが、その先生からは「理論」と「実務」を架橋することの重要性を教えていただき、その教えは今の業務にも活かされている。大変貴重だった。また、1年夏学期終了後は国土交通省にインターンシップをさせていただいた。終了後振り返ると、自分は「公に貢献する」ことに実はとても強い思いを秘めていて、かつ「インフラが好きだ」ということを自覚した。さらに、その先生のお話を伺うにつけ、「地方」に貢献することの重要性も痛感し、1年冬学期のその先生の事例研究では地方自治体の観光政策をテーマとした。こうした思索を続ける中で、私は「インフラ」と「観光」の双方に、民間の立場でかつ「公」の視点を持って携わりたいと考え、進路を公務員から鉄道会社とした。無事内定もいただき、2年冬学期は鉄道会社に関わるところで都市鉄道政策を学んだ。

3.友人関係、先生との関係(人脈)

さて、実践的な学びに惹かれてGraSPP入学を志した私だが、GraSPPで自分のプライスレスな果実となったのは「学び」だけではない。友人関係や先生との関係という「人脈」という点でもその後の自分の人生に大きな影響があった。
以前3期生の赤尾さんがご指摘されていたように、私の在学中は黎明期でもあって自分を含む4期生は大変自由闊達な雰囲気があふれていた。授業の内外を問わず切磋琢磨する、議論する中で培われた友人関係はまさに一生ものだった。当時、GraSPP専用の校舎はなく、経済政策コースとそれ以外のコースが分かれていたが、だからこそそのハンデを超えた結びつきは固いものがあったと自負している。いうなれば、電話一本で友人を通じて霞ヶ関だけでなく各業界に散った友人から何でも聞けるという素晴らしい関係である。
また、様々なことを教えていただいた先生方との関係は今でも継続しており、お目にかかった際に政策課題等についてご知見を伺うだけでなく、研修の講師を僭越ながら引き受けさせていただく、あるいは自分の結婚式にご出席をいただく等、その関係は在学中と変わらない素晴らしい関係と感じている。

4.修了後、現在の職業との関係(在学中身に着けた考え方と仕事へのつながり)

大学入学時は進路が全く定まっていなかった私であったが、振り返るとGraSPPで過ごした2年間があったからこそ、鉄道の世界と一見縁もゆかりもない自分が鉄道会社の社員になったと考えている。なお、在学中に身に着けることができたのは上記のような個別の政策の学びにとどまらず、物事を俯瞰して観察する「大局観」ではなかったかと考えている。物事を俯瞰して考えることはその後の社業でも大きく役立っているし、私の一つの強みになっていると感じている。たとえば、現在私はインド高速鉄道のプロジェクトに関係する業務を行っているが、ふと俯瞰した視点で自分の業務と政策過程との関係を意識すると別の世界が見えてくる。また、秋の外交日程で今後の自分の業務も影響を受ける、等ある。
前述の通りGraSPPで知的体力が養われたわけだが、むしろそれがなくては2年弱の留学生活(2013年夏~2015年夏)も乗り切れなかったと考えている。
なお、修了後同窓会の会長も縁あってやらせていただいたが、小さい組織ではあったものの、組織を束ねる役職を経験させていただき業務では経験できないリーダーシップを磨く機会を頂けたと思う。

5.終わりに

皆さんには同窓会の集まり、イベントにはぜひ参加していただきたいと思う(ご都合のつく限りで構いませんが)。長々と書いてしまったが、振り返ると授業で学んだこと(学び)、2年間プラスαの友人・先生との関係(人脈)、大学院全体で身に着けたこと(考え方)、いずれも代えがたいものと感じるばかりである。在学生の皆さんは2年間はとにかく走るということになってしまうかもしれないが、修了後ふと思い返すとそのありがたみを実感できると思うので、ぜひ今のこの一瞬を大事にしていただきたい。