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司法過程論

担当教官

太田 勝造

科目番号

11120

学期

曜日・時限

水曜4限

単位

内容・進め方・主要文献等

法の定立によって法が自動的に実現されるものではない.法システムの強制の通りに法が実現されるわけでもない.法は社会構成員間の相互作用のひとつのパラメータとして作用するに過ぎない.この社会的相互作用のプロセスを経由することを通じて,同じ内容の法も社会の多様性にしたがってさまざまな社会状態を帰結する.法の解釈適用も法実務も,このような法の社会過程(法過程)を通じてその社会的意味を付与されるものでしかない.したがって,現代社会における法過程への洞察なくして法を論じることはできない.そして,法過程への洞察は,安楽椅子に腰掛けての哲学的夢想や外国学説の模倣からもたらされることはありえない.それは,社会科学的手法によってのみ得ることができる.

 本講義は,法の解釈適用,法実践,法と社会の相互作用に対して,学際的手法を用いてアプローチするものである.学際的手法として本講義で重視するものは,「法と経済学」,ゲイムの理論,進化論,および,経験科学的社会学の手法である.法と経済学の手法を重視するのは,その政策科学としての色彩が,法の解釈適用という政策的価値判断の色彩の強い社会行為に対して従来の法解釈学とは異なる新たな光を当てるものだからである.進化論とゲイムの理論を重視するのは,それが社会構成員間の相互行為の構造とダイナミクスを明らかにするものだからである.経験科学的社会学の手法を重視するのは,法律学の多くの争点が社会の現実に対して開かれた問題であり,社会的事実の間主観的理解なしには意味のある解決を探求できない性質のものだからである.

 社会科学の諸手法は,法学部学生にとって慣れ親しんだ手法とは言い難いものであるので,また,「社会科学マインド」は,いわゆる「リーガル・マインド」とは大きく異なるものであるので,社会科学の発想方法まで遡って説明して行く.その上で,統計学,法と経済学,社会心理学,ゲイムの理論,進化論などの初歩を説明して行く.

本講義では,法をめぐる現代的で具体的な諸問題を主要な対象とし,上記社会科学の諸手法を学際的に用いてアプロー チする.具体的には,司法制度,裁判手続,所有権法,契約法,不法行為,および刑事法における具体的諸問題を対象として議論する.

教材等

追って指示ないし配布する

成績評価の方法

筆記試験による。