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地方自治法

担当教官

山本 隆司

科目番号

11070

学期

曜日・時限

月曜2限

単位

科目概要

地方自治体は、住民が身近に民主主義的な参加をなし得る場であり、また、国や他の地方自治体と競争しながら施策を実験することもできる。他面で、地方自治体がある種の特殊利益に偏った決定・作用を行う可能性、および国や他の地方自治体の施策との間に合理性を欠く不整合が生じる可能性に対する歯止めも必要である。こうした問題意識のもとで、本講義では、地方自治体の組織および作用を、国の組織および作用と対比しつつ、また国の組織および作用との関係を明らかにしながら、法的に分析する。

前提履修科目

法学部の憲法・行政法の講義、あるいは本大学院の「公法の基層と現代的課題」を履修していることが望まれる。

成績評価

筆記試験による。

テキスト

塩野宏『行政法III(第2版)』を予習用の教材とし、磯部力=小幡純子=斎藤誠編『地方自治判例百選(第3版)』を適宜用いる。

参考文献

講義の中で言及する。さしあたり地方自治法の註釈書として、成田頼明ほか編『注釈地方自治法(加除式)』、松本英昭『逐条地方自治法(新版第一次改訂版)』を挙げておく。

講義日程

 変更があり得る。

10月18日 法原理としての地方自治(1)−権力分立原理と民主主義原理から見た地方自治の意義、および日本の地方自治制度の歴史と比較法的特徴について、概観を示す。

10月25日 法原理としての地方自治(2)−第1回の講義を踏まえて、憲法第8章「地方自治」の解釈、および固有権説・伝来説・制度的保障論等の学説の分析を行う。

11月1日 地方公共団体の単位−市町村と都道府県の二層制、次いで各種の特別地方公共団体の組織を分析する。道州制論、そして近年の市町村合併も視野に入れる。

11月8日 地方公共団体の組織(1)−自治組織権の意義を押さえた上で、首長主義・執行機関の多元主義といった地方公共団体の組織の基本構造を明らかにする。近時の新公共管理論も説明する。

11月15日 地方公共団体の組織(2)−議員の地位、議会内部の手続・組織、議会と長との関係、長と他の執行機関との関係について、順次分析していく。機関争訟も取り上げる。

11月22日 住民の民主主義的参加−解職請求、事務監査請求、住民発案、さらにレファレンダム等の直接民主主義的参加の制度について、解釈論および立法論上の問題を取り上げる。外国人の参政権も扱う。

11月29日 地方公共団体の事務−地方分権一括法制定後の、国と地方公共団体との役割分担に関する原則を説明した上で、国の専管事務、自治事務、法定受託事務の概念を分析する。

12月6日 関与の手続−地方公共団体の事務処理に対する国の関与について、関与法定主義、適正手続などの基本法理を解明した上で、関与の諸類型を分析する。さらに、逆に国の意思決定に地方公共団体が参加する制度も取り上げる。

12月13日 係争処理の手続−国地方係争処理委員会による手続、自治紛争処理委員による手続、関与に関する国・地方公共団体間の訴訟、職務執行命令訴訟について、具体的な事例に即して説明する。

12月20日 条例と規則−条例と法律との関係、条例と規則との関係という古典的な問題を、地方分権一括法により問題状況が変わったか否かも考慮しながら、解明する。

1月17日 地方公共団体の各種作用−地域計画、公の施設、私経済的活動といった分野を取り上げて、行政法一般理論と結びつけつつ、地方公共団体の各種作用の特徴をつかむ。

1月24日 住民監査請求・住民訴訟−住民監査請求と住民訴訟に関する諸問題を、近時の法改正に言及しつつ論じる。その際、住民訴訟に関する多数の、時に錯綜した判例を、理論的に整理して示す。

1月31日 試験

その他