国際法・国際関係における文化について、国際社会における力・権力のあり方と関連付けて検討する。 近年、コンストラクティヴィズムにおける文化やアイデンティティをめぐる議論の表出や「文明の衝突」論にみられるように、国際社会における「文化」「文明」をめぐる議論が盛んになっている。この背景には、冷戦終結後、宗教や民族をめぐる紛争の多発という状況があり、従来の経済、軍事、政治などの側面から国際関係をとらえることに限界があるという指摘がある。この授業では、「文化」という側面から国際法・国際関係における力関係や権力構造を捉え直すことによって、より多角的な国際法・国際関係の理解をめざす。 文化を考える上では色々な切り口が考えられる。文化が普遍主義的側面を有するのか、それとも固有主義の方向性をもつものかという論点。グローバリゼーションが進展する中で、経済的な動きと結びついた「大衆文化」が果たしてより統合的な役割を果たすかどうかについても、議論がなされている。さらに、「世界文化遺産」をめぐるユネスコなどの国際機関と文化の問題も重要な課題である。国際機関が文化の問題を取り上げる場合には、法的、制度的取り組みが必要となり、国際法という視点からも考察されなければならない。 こうした緒論点は、文化と権力との関係という論点に結び付く。諸国家は、文化外交という取り組みを推進してきたし、また、文化は「ソフトパワー」であり、国家のパワーの欠くべからざる側面であるという議論もある。国際社会における欧米中心主義的な構造それ自体を「文化帝国主義」と捉える見方もある。 前期は主に主要文献を指示・配布して、輪読するほか、外部講師を招いて講演していただく。後期は、参加者の関心にしたがってテーマを割り当て、ゼミで報告してもらう予定である。いずれの場合も、授業の最初の30分程度を担当者の報告に、残りの時間をオープン・ディスカッションに充てる。公共政策大学院との合併ゼミである。 参加者の負担は大きいが、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科の篠原初枝教授が非常勤講師として参加するほか、東大人文社会系研究科の小林真理助教授も随時参加するなど、興味深いゼミになると確信している。 |