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比較政策過程論 シラバス

担当教員

久保 文明小川 有美若松 邦弘

科目番号

22020

学期

曜日・時限

木曜2限

単位

2

科目概要

アメリカ合衆国といくつかのヨーロッパ諸国を取り上げながら、比較政治的観点から政策過程を学習する。ヨーロッパについては北欧とイギリスをとりあげたい。重要な論点としては、政策形成の背景となる各国の公式の制度、官僚制の特質、政治文化、政党や利益団体の役割、政策案形成の能力(シンクタンクや利益団体など)、国ごとの、そして政策領域ごとの歴史的背景、比較政策分析のために有効な理論的概念などが挙げられる。政策過程の具体例にも言及する予定である。

前提履修科目

成績評価

筆記試験を主体とし、平常点を加味する。

テキスト

 

参考文献

全体を通した参考文献としては、小川有美・岩崎正洋編『アクセス地域研究 先進デモクラシーの再構築』(日本経済評論社、2004年)

アメリカに関しては阿部斉・久保文明『国際社会研究I 現代アメリカの政治』(放送大学教育振興会、2002年)

イギリスに関しては以下を参照。
- Michael Hill (1997), The Policy Process in the Modern State 3rd edn, Prentice Hall
- Martin J. Smith (1993), Pressure, Power and Policy: Policy Networks and State Autonomy in Britain and the United States, Harvester Wheatsheaf
- Martin J. Smith (1999), The Core Executive in Britain, Macmillan

これ以外の文献は授業時に紹介する。

講義日程

4/7 ガイダンス(久保文明)

第1部 アメリカ合衆国の政策過程(久保文明)

4/14 大統領制下の政策過程
アメリカの憲法体制(連邦制、大統領制など)の特質について解説し、とくに議院内閣制とは根本的に異なる部分が大きい大統領制のもとでの政策過程の特徴を指摘する。

4/21 連邦議会と政党の役割
アメリカ的権力分立制のもとでは、とくに立法過程において議会の役割が決定的に重要となる。またここにおいて、アメリカの政党の規律が弱く、交差投票が多いことがさらに事態を複雑にする。スタッフの役割などにも触れながら、議会を中心に政策形成過程について分析したい。

4/28  利益団体・社会運動・シンクタンクと政策過程
アメリカの政党は利益団体、政治運動、社会運動に対してきわめて開放的な性格をもつ。また規模の大きな団体や運動は政策専門家を多数擁することができる。シンクタンクの役割についても触れながら、アジェンダ・セッティングから政策の実施にいたるまでの過程について概観したい。

5/12  イシュー・ネットワークとイデオロギーの政治、およびいくつかの事例
アメリカの政策過程については「鉄の三角形」や「イシュー・ネットワーク」などさまざまなモデルが提示されてきた。他方で、政策領域によってはイデオロギーや価値観、宗教などが突出した重要性をもつ場合もある。いくつかの事例にも触れながら説明したい。

第2部  北欧諸国の政策過程(小川有美)

5/19 北欧福祉国家レジームの現代的変容
 普遍主義的/社会民主主義的福祉国家といわれる北欧の福祉国家レジームは、どのような政治的ロジックで形成され、グローバル化の下でどこまで変容を迫られているのか。この問題を中心に論じながら、あわせて権力資源動員論、非難回避の政治論、小国コーポラティズム論など、北欧を典型事例とする分析枠組の射程と有効性についても検討していきたい。

5/26 北欧の政党システムと新しい政策イシュー
 リプセット=ロッカンによる政党システム・モデルの原型となった北欧の政党システムであるが、政治・社会構造が流動化した今日、従来の左?右対立、与党?野党対立に回収しきれないイシューに対応することが、政党の生き残りを決することとなった。環境とエネルギー、外国人と社会的包摂等の政策イシューに対して、政党および非政党アクターがどのように対応する図式ができつつあるのか、北欧諸国間の比較を交えて分析する。

6/2 北欧型ガバナンス改革の模索
 「中央」対「周辺」の亀裂をもつ北欧社会は、20世紀に社会民主主義主導のナショナルな福祉国家によって統合された。しかし、今日競争原理の導入、自治体の自由化、欧州統合など、その基本構造を揺るがす改革が続いている。「マルチレベル・ガバナンス」というは易しいが、3レベル、4レベルゲームと化していく北欧のガバナンスが、どのように民主的統治パフォーマンスを維持しようとしているのかを観察する。

6/9 国際ガバナンスと北欧
 国連・途上国援助・紛争解決に積極的なコミットメントを行ってきた一方、欧州統合の含意する超国家統合に対しては選択的・懐疑的な参加姿勢をとってきた北欧諸国は、大国、準大国型とは全く異なる、独特の国際政策を構築しているといってよい。そこにおける小国なりのディスクール(言説)、パワーリソース、ネットワーク等はどのような性格をもつものであろうか。紛争解決政策、環境政策等を事例に具体的に観察したい。

第3部 イギリスの政策過程(若松邦弘)

6/16 イギリス:利益集団と政策ネットワーク
  政府と利益集団の関係についての視点を検討する。

6/23 イギリス:首相・内閣とコアエグゼクティブ
 首相・内閣のリーダーシップを前提とする行政府政治についての視点を検討する。

6/30 イギリス:議会制度と立法過程
 ウェストミンスター議会の諸制度と法案審議の過程についての論点を検討する。

7/7 イギリス:政策過程の変容
 イギリスのまとめとして、第二次大戦後から今日までに見られる重要な政策過程の変容を考える。

7/14 期末試験
 アメリカ、北欧、イギリスに関してそれぞれ1問ずつ出題する。

その他