国際法の理論と実践

担当教員

大沼 保昭渡辺 浩

配当学期・曜日・時限

夏学期 水曜 5限 (隔週)(通)
冬学期 水曜 5限 (隔週)(通)

内容・進め方・主要文献等

19世紀以前の世界では、東アジア、南アジア、中央・西アジア、欧州、アメリカ大陸などの各地域に、宗教や政治・経済・社会制度、文化などを異にする地域世界が併存していた。これらの地域世界は、境界やその主要な担い手(「民族」や「国家」「帝国」など)を変えながら、一定の規範観念や制度を共有していた。

欧州に主権国家体系が生まれ、産業革命を経て軍事力、経済力を向上させると共に、欧州列強は清朝など、他の地域の支配的な勢力を圧倒し、19世紀末には欧州諸国の世界秩序原理だった主権国家体制が植民地体制を伴って世界的規模で確立した。本ゼミでは、こうした欧州中心の主権国家体制の全世界化の様相とそれに伴う諸地域の人々の認識枠組みの変容を、19世紀から20世紀の東アジアを中心に検討する。

「変容」を語るには、19世紀以前の東アジアの人々の認識のあり方、その枠組みを知らなければならない。同時に、世界化した欧州の主権国家体制を中心とする世界認識のあり方も知らなければならない。本ゼミは、日本政治思想史と国際法の教員が合同で通年(原則として隔週)のゼミを行うこと(多分、世界で最初の試みである)により、こうした問題を多様な角度から捉えようとするものである。

参加者は、国際法、国際関係史、東アジアの政治・法観念や制度、その歴史に関心をもっていることが求められる。演習は原則として水曜の5限に隔週で行うが、若干変化がありうる。前期(4−9月)は、必読文献を全員で講読し、それについて自由に議論して文献の内容の正確な理解をはかる。また夏休みに合宿を行い、後期の報告に向けて各人の問題意識を明確化させると共に、報告の概要を指導教授とゼミ生全員に提示して、自らの視点と主張の対象化をはかる。後期にはそれまでの研究を踏まえて各人が順に報告を行い、それを受けて参加者全員で討論を行う。

なお、第1回ゼミの前に説明会を行い、教材を配布するので掲示に注意しておくこと。

教材等

第1回説明会で配布するほか、適宜掲示・指示(メールを活用)する。

テクスト

第1回(2006年4月12日の説明会)の際に配布する。

参考文献

大沼保昭『国際法』(東信堂、2005年)
大沼保昭「国際法史再構成の試み」比較法史学会編『文明と法の衝突(比較法史研究 第9号)』(未来社,2001年)
ONUMA Yasuaki, "When was the Law of International Society Born?", Journal of the History of International Law, II, no.2(2000)
カール・シュミット『大地のノモス』上下(福村出版、1984年)
佐藤慎一『近代中国の知識人と文明』(東大出版会、1996年)
渡辺浩 「思想問題としての『開国』」(朴忠錫ほか編『国家理念と対外認識 17−19世紀』慶應義塾大学出版会、2001年)

演習日程

前期

4/12 ゼミ全体の説明
4/19 渡辺による講義(儒学の政治思想と中華秩序)と議論
4/26 大沼による講義(大沼「国際法史再構成の試み」を中心として)と議論

以下の回では、参加者が予めテクストを読んできて、それについて全員で議論する。

5/10 大沼編『(グロティウス)戦争と平和の法』第12章と補論
5/24 マカートニー『中国使節訪問日記』等(清朝皇帝にも謁見した英国外交官の体験記録。交渉とすれ違いと当惑。)
6/21 日米和親条約・日米修好通商条約締結関係の史料(ペリーの要求。ハリスの熱弁。老中たちの対応。)
6/28 Wheaton,Elements of International Lawとその訳『万国公法』
7/5 大久保利通ほか『使清弁理始末』(台湾出兵後の外交交渉の記録)
7/19 中江兆民『三酔人経綸問答』(19世紀末、知識人の悩み多き外交論)
7月下旬 2泊3日程度のゼミ合宿

後期

基本的に10/4から隔週で、参加者の報告と参加者全員による討論を行う。ただし、参加者の人数等により、厳密に隔週でないこともありうる。参加者は、水曜日の5限は毎週空けておくこと。

成績評価の方法

平常点による。

関連項目