地域政治C(現代アメリカの政治)

担当教員

五十嵐 武士

配当学期・曜日・時限

夏学期 水曜 3限

内容・進め方・主要文献等

ジョージ・W・ブッシュ政権がイラク戦争を始めたことによって,アメリカはニ一世紀の世界情勢を左右する「帝国」になったとみなされている。しかし,その背景には現代の世界が,グローバライゼーションを急速に進める構造的な変容の真只中にあるという事実を見逃すべきではない。アメリカの「帝国」化も,多分にそのよう情勢を反映しているといえるのである。本講義では現代の世界情勢を解明するために,その情勢を大きく左右し,グローバライゼーションの主たる震源地にもなっているアメリカの政治経済体制や国際関係を考察していく。

本講義はマクロな視点から,まず初めにアメリカの国家としての基本的な性格を検討から始める。そこではアメリカが,帝国主義を思い浮かばせるような,伝統的な「帝国」という言葉では十分把握しきれない,現代文明や生活様式自体を創出し,それをグローバライゼーションによって世界大に伝播させていく独特のヴァイタリティを備えていることを,改めて確認することになろう。

次いで現代のアメリカの政治経済体制がいかなる性格のものかの検討に移り,80年代以降それまで半世紀近く続いたニューディル体制が,レーガン政権以降の共和党政権によって,政治的にも,また経済政策においても大きく変容させられた点を明らかにする。この点では日本が大きなインパクトを与えていたことも指摘したい。と同時に冷戦を再び激化させ、結果的に冷戦を終結に導いたことによって,その対外政策が現代にも受け継がれていることを明らかにする。

冷戦後の国際情勢にアメリカがいかに対応してきたのかが,現代のまさに問題になるが,この点については冷戦の戦後処理,アメリカ経済の再建,共和党右派の優勢化,通貨危機への対応,中東政策,9月11日のテロ事件以降の対外政策や内政の展開といった諸問題を,考察していくことにしたい。

講義日程

講義の構成は以下のように予定している。
1. 現在のグローバライゼーションと発信源としてのアメリカ
2. アメリカの政治体制
3. 政治・政策過程の構造
4. 対外政策の形成・決定過程
5. 大統領政治の展開
6. ニューディル体制の変容
7. 冷戦の終結と冷戦後の対外政策
8. クリントン政権とアメリカ経済の再建
9. 共和党右派の多数派形成
10. ネオ・コンサーヴァティヴの台頭と共和党の対外政策
11. アメリカの中東政策と9·11テロ事件
12. イラク戦争と共和党右派の主導権

教材等

五十嵐武士『覇権国アメリカの再編』(東京大学出版会 2001年)
五十嵐編『太平洋世界の国際関係』(彩流社 2005年)
五十嵐編『アメリカ外交と二一世紀の世界』(昭和堂 2006年)
久保文明編『G・W・ブッシュ政権とアメリカの保守勢力』(日本国際問題研究所 2003年)
久保編『アメリカの政治』(弘文堂 2005年)

成績評価の方法

筆記試験による

関連項目