事例研究(電子政府と業務改革)

担当教員

城山 英明奥村 裕一

配当学期・曜日・時限

冬学期 月曜 5限 (〜20:20まで)

内容・進め方・主要文献等

電子政府といえば、一般にはウェブポータルを通じる政府の情報提供や電子申請あるいは市民との対話を思い浮かべるであろう。また、ITシステムの技術論と映るかもしれない。しかし、本事例研究で取り上げる電子政府は、単なる技術論ではなく、人、資金、そしてITを行政運営に不可欠な要素として一体的にとらえ、各要素の特徴を活かしながら合目的的に柔軟に組み合わせていく効率的で創造的な行政マネジメントに基づいた政府のことである。このためには、ITシステム導入の前にまず、業務改革すなわち業務目的の明確化とそれに応じた業務方法の改革を志向しなければならない。このような発想は、民間企業では情報技術の活用の前提として当然の考え方であるが、行政においてはまだその端緒についたばかりである。 この発想を拡大すれば、たとえば各省庁に分かれている共通の業務の事実上の統合による効率化と行政需要の高まる分野への人員配置も可能となる。しかし行政府の場合、法的規制のみならず慣行を含む制度的制約も数多く存在する。また、このような業務運営のあり方は、政策形成過程の基礎となる基盤的なインフラでもある。本事例研究では、日本政府(自治体を含む)における制度的制約を明確にしながら、まず、現在の政府の業務運営を可視化し、その上で業務改革とは何か、ITシステム導入の持つ意味は何かを、欧米諸国との比較を取り入れつつ行政学的・制度論的視点から明らかにする。

なお、電子政府の実態把握に当たっては各省庁の担当官や現場の政策形成プロセス関係者との意見交換の場を数多く設ける。また、参加者は海外等の事例について報告するとともに、日本の電子政府の実情と課題について共同で調査し、報告することが求められる。

教材等

ジェーン・ファウンテン著、奥村裕一訳『仮想国家の建設』一藝社(2005)、城山英明・鈴木寛・細野助博編著『中央省庁の政策形成過程』中央大学出版部(1999)、城山英明・細野助博編著『(続)中央省庁の政策形成過程』中央大学出版部(2002)、日本政府:「電子政府の推進について」、米国政府:「Whitehouseの取り組み」、“Governing by Network” (翻訳中)、キャプラン,R.S/ノートン,D.P 著/櫻井 通晴 監訳『戦略バランストスコアカード』東洋経済

成績評価の方法

平常点、レポート等による。

関連項目