法と経済学 I

担当教員

森田 修藤田 友敬松村 敏弘

配当学期・曜日・時限

冬学期 火曜 2限 

内容・進め方・主要文献等

経済学の手法を用いて法制度・法現象の分析を行う「法と経済学(law and economics)」は,伝統的な法解釈学と異なる法の機能的な分析の手法である.本講義では,その方法論的な基礎とその基本的な考え方を学ぶことを目的とする.最初に,経済学の基本的な考え方,分析ツールを説明し,その後,契約法,担保法,不法行為法,会社法等を素材に,具体的な議論を紹介していく.

本講義は、神田秀樹・中里実・森田修・太田勝造・藤田友敬・松村敏弘の6名が責任をもって企画するが、本年度は、森田・藤田・松村の3名によるオムニバス形式で行う。(1)経済学の基本的な考え方,分析ツール等の説明を松村が,(2)契約法及び担保法を森田が,(3)損害賠償法等を藤田が分担する.

教材等

ロバート・D・クーター, トーマス・S・ユーレン共著(太田勝造訳)『法と経済学(新版)』(商事法務研究会,1997年)第5章
Steven Shavell, Foundations of Economic Analysis of Law, Harvard University Press, 2004

ギボンズ(福岡正夫/須田伸一訳)『経済学のためのゲーム理論入門』 ( 創文社, 1994)
三輪芳朗=神田秀樹=柳川範之『会社法の経済学』(東京大学出版会, 1998 年) 279 頁

授業の構成

第1回〜第6回  ミクロ経済学の基礎 (1) 〜 (6)
これまで経済学を学んだことがない学生がいることを前提に,経済学とはどういう学問か,経済学の議論にはどういう性格と特徴があるのかといったことを説明し,本講義との関係で必要な基本的知識について,やや立ち入った説明をする(たとえば,市場均衡効率性,コースの定理,市場の失敗,初歩的なゲーム理論,不確実性と情報の経済学の基礎等).あわせてこれらの道具の使い方を具体的な法ルールの分析を通じて学ぶ.

第 7 回 財産権とその保護: property rule と liability rule
財産権の割り振り,財産権を保護する手法としての property rule と liability rule について検討する.

第8回 不法行為法の経済分析(1)
不法行為に基づく損害賠償ルールの分析のための基本モデルを説明する.

第9回 不法行為法の経済分析(2)
不法行為に基づく損害賠償ルールの分析のための基本モデルの若干の拡張を試みる.

第10回 契約法の経済分析(1)
ミクロ経済学の基礎で学んだいくつかのロジックの応用として,契約責任法の経済分析を試みる.特にゲーム理論の技法を中心に取り扱う.

第11回 契約法の経済分析(2)
長期契約と信頼について無限繰り返しゲームの観点から分析を加える.契約紛争の解決のための交渉を素材として,交渉ゲーム理論についての理解を深める.

第12回 倒産・担保法の経済分析(1)
アメリカにおける「担保のパズル」をめぐる論争を分析し,そこで登場するいつかの法と経済学のツールについて紹介し,その帰結を検討する.特にシグナリング・ゲームの技法について学ぶ.

第13回 倒産・担保法の経済分析(2)
決定権移動理論の観点から,担保制度を倒産手続との連続において分析する.倒産手続の経済分析の学説史を概観し,近時のアメリカの連邦倒産法をめぐる 議論の意義について検討する.

第 14 回 社会規範の法と経済学
社会規範の経済的メカニズム,法的介入の適否等を検討する.

成績評価の方法

筆記試験による。

関連項目