法と人間行動

担当教員

廣瀬 久和

配当学期・曜日・時限

冬学期 金曜 5限 

内容・進め方・主要文献等

わが国では近年法が観念的な技術のように考えられる傾向が強くなっている。そしてロー・スクール制度の創設は知識・技術としての法の重要性に拍車をかけているかに感じられる。しかし、法の一つの重要な役割は、人間同士の紛争の解決であったはずであり、その紛争は、単に希少資源の強引な奪い合いといったものにではなく、相手の行動をお互いが理解できないことに発していることも多い(例えば、境界線紛争は、いくら裁判所できれいに境界線を引いたとしても、隣人間の紛争の元は、何年か前のちょっとした行き違いにあったかも知れず、その元を相手の立場に立ってお互いに曝け出させて主張させてみるような仕組みを考える方が、弁護士同士の法的に構成された主張の戦いよりも、真の紛争の解消をもたらすかもしれない)。また、資源の奪い合いにあっても、相手が何ゆえにそれに固執するのかの源が理解できると、抜本的な対策を講じうるし、紛争自体が消えていくこともありうる、と私は考えている。つまり、法律の制度も、紛争解決のための一つの道具にすぎず、もっと大きな視野の下に、人間行動をダイレクトに把握・検討する試みがなされてもいいのではないか、と思うわけである。

このような観点から、2年前より、法学部のゼミにおいて、文学部で社会心理学を教えておられる山口勧教授などのご協力を得ながら、「法と心理」とか「法・心理・教育」といったテーマのゼミを開いてきた。本年度は、これを「法と人間行動」と題し、意欲のある公共政策の大学院生にも加わっていただくことにした。人数が多すぎると結局意義がうすれるので、相当人数制限をする予定であることを、お許しいただきたい。

テーマとしては、法と心理学、消費者行動論、心理学における公正の概念と法、などで、法制度としては民事法・公法にウエイトがおかれそうだが、参加者の希望により、刑事法にも及ぶ可能性がある。

教材等

教室において随時指示するが、山口勧教授編著の『ベーシック現代社会心理学7:社会心理学』(有斐閣)などが入門書として参考になる。

成績評価の方法

平常点およびレポートによる。

関連項目