環境政策の法と経済学T

担当教員

小早川光郎  ・ 島田 明夫

配当学期・曜日・時限

冬学期 金曜6限 

内容・進め方・主要文献等

21世紀は「環境の世紀」であるといわれており、地球環境問題の出現を重要な契機として環境問題への関心が飛躍的に高まり、それに伴って環境政策への期待が大きくなってきている。環境破壊の原因は経済活動であり、環境問題の本質は自然現象を通じて現れる社会経済現象であるといえる。このような環境問題の解決にはなんらかの公的介入すなわち環境政策が必要不可欠であり、効率的な環境制御の方法を見いだすためには、法学とともに経済学が果たすべき役割は小さくない。しかしながら、我が国の公害問題に対する対策を進めてきたのは、主として住民運動や公害裁判であり、理論的にも共同不法行為や無過失責任など公害責任に関する法学の寄与が明確なのに対して経済学の貢献として明示できるものは必ずしも多くはなかった。

 これに対して、地球環境問題が国内外でさかんに議論され、京都議定書を契機として、二酸化炭素の削減に関して、環境税や排出権取引などの経済的インセンティブを利用した新たな環境政策を導入しようとする動きも活発になってきた。しかしながら、これらの経済的手段が理論的に有効であるという研究は蓄積されているものの、実証例が少ないこともあって必ずしも十分な実証分析や制度設計がなされているとは言い難い状況にある。

 本演習では、環境政策に対するニーズの高度化に対応して、学際的な研究分野である「法と経済学」の方法論を使って、国内外の環境政策の経済分析などを試みる。

本演習に参加する上で、ミクロ経済学、統計学、高等数学などの基礎知識は必要としないが、必要に応じて、演習の中で(なるべく数式を使わないように)わかりやすく教示する。環境行政に対する法政策的な関心と法解釈学とは異なる分析手法を理解する柔軟な思考力があればよい。

なお、来年度は、将来の環境政策について、法制度・経済効果の両方の側面から現実的な制度設計のあり方及び地球環境問題に対する取り組みについて検討する予定であるが、本年度と来年度は各々独立した演習であるので、本年度のみの受講も可能である。

授業の構成

以下の事項を取り上げる。
T 環境政策の推移
U 環境政策の基本理念と原則
V 環境法の概要
W 環境に係る経済学の基本
X 環境に係る法と経済学の基本
Y レポートの発表と意見交換

参加者は、演習最終回で特定のテーマについての研究成果をレポートに纏めて発表し、それについての質疑応答に積極的に参加することが求められる。

教材等

【教材】
資料を配付する予定

【参考文献】
・ 倉阪秀史『環境政策論』(新山社、2004年)
・フィールド(秋田次郎他 訳)『環境経済学入門』(日本評論社、 2002年)
・植田和弘、岡敏弘、新澤秀則『環境政策の経済学』(日本評論社、 1997年)
・日引聡、有村俊秀『入門環境経済学』(中公新書、2002年)
・大塚直『環境法<第2版>』(有斐閣、2006年)
・淡路剛久、川本隆史、植田和弘、長谷川公一『リーディングス環境第4巻 法・経済・政策』
・クーター、ユーレン(太田勝造 訳)『法と経済学』(商事法務研究会、1997年)
・小林秀之、神田秀樹『法と経済学入門』(弘文堂、1996年)

成績評価の方法

平常点による。
レポートを課す。

関連項目