農業政策

担当教員

本間 正義

配当学期・曜日・時限

夏学期 月曜 2限 

内容・進め方・主要文献等

農業政策は先進国では保護政策、発展途上国では抑圧的政策が採られてきた。これは経済が発展するにつれ農業の役割が変化することに対応しているのであるが、農業がいかに政府介入を伴う産業であるかを示している。本講義では、まず農業政策の背景にある政治市場と政策決定のプロセスを理論的に整理し、その上で日本の各種農業政策を検討する。日本の農業保護の成長過程は韓国や台湾によって繰り返されており、そこにある共通点を過去50年に亘る統計データから検証する。また、国際的には、WTO交渉やFTAにおいて農業はグローバル化を求められている。果たして日本農業はこうした問題にどう対処しようとしているのか。農業問題を様々な角度からの検討を通じ、今後の日本の農業・農業政策のあり方を探る。

[主要文献]

・本間正義『現代日本農業の政策過程』慶應大学出版会(近刊)
・本間正義『農業問題の政治経済学』日本経済新聞社
・奥野・本間編著『農業問題の経済分析』日本経済新聞社
・本間・George-Mulgan・神門「日本農業の国際化と政治・農協の変革」RIETI Discussion Paper Series 04-J-024、2004年、経済産業研究所

教材等

特に指定しない。必要に応じてプリントを配布する。

講義日程

学期当初の予定である。今後、授業の進行状況に応じて変更することがある。

4月9日
なにが問題か:農業を巡る問題は農業内部だけでなく、むしろグローバル化や経済の構造改革にからめて議論されることが多くなっている。実際、農業は経済財政諮問会議の専門調査会で検討されており、また規制改革会議でも主要なテーマの一つとされている。いまなぜ農業が問題なのかを解説する。

4月16日
農業問題の源泉: 農業政策が農業収奪(途上国段階)から農業保護(先進国段階)に変遷するメカニズムを農産物に対する需要と供給の変化、政治をとりまく条件の変化をからめて説明する。これは日本に特有な現象ではなく、世界各国の農業政策に共通する現象であることを講義する。

4月23日
日本農業の現状: 日本農業の実態を概観する。生産と消費両面で農業をとらえるが、輸入食料の重要性を併せて説明。食料需給の変化に伴い、農業構造がどのように変わってきたのか。農家とはどのような家計をいうのか。国民経済の中で農業はどのように位置づけられているのかを講義する。

5月7日
米政策の変遷: これまで農業政策の中心に位置してきた米政策を振り返る。戦時立法で確立した食管制度の役割と限界、米の過剰対策としてパイロット的に導入された生産調整(減反)政策の推移とその問題点、 1995 年に食管法に代わって制定された食糧法の意味、またコメの農業における重要性の変化と政策対応などについて議論する。

5月14日
農業基本法の下での農政展開: 戦後農政の憲法であった農業基本法( 1961 〜 1999 年)の下での日本農業の展開を分析する。基本法に掲げられた理念をどのような政策で実現しようとしたのか。現実の農業はどのように対応したのか。政府の介入がどのように定着しどのように農業構造が歪んでいったかを講義する。

5月21日
農地改革と農地制度: 戦後の農地改革の成果を守るため制定された農地法の功罪を検討する。原則として農業者にしか所有を認めない耕作者主義は参入規制となり規模拡大を限定的なものにしてきた。また、転用期待の除去なしには農地の集約は進まない。農地制度改革がなぜ必要なのかを議論する。

5月28日
食料・農業・農村基本法と現在の農業政策: 1999 年に制定された新基本法を巡る議論とそれに基づく新しい農業政策の意義と問題点を検証する。新基本法は農業に食料、農村を加え対象を対拡大し、また農業の多面的機能を重視する。その下で具体的政策は基本計画に盛られるが、その新しい基本内容を講義する。

6月4日
米政策改革とこれからのコメ: 米政策改革が 2004 年度から実施されているが、その根幹は補助金政策の見直しと生産調整の農業団体への移行である。生産者の自由度は増し同時に自己責任も重くなる。 2007 年度から実施される生産調整の民営化は成功するのか、また生産調整に頼ることが日本のコメにとって望ましいのか等を議論する。

6月11日
品目横断政策と担い手問題: 2007 年度に導入される品目横断政策は対象を担い手に限って一定の所得補償をする政策であるが、こうした日本型直接支払いの目的と意義はなにか。これによって農業の構造改革は進むのか。また施策の対象となる担い手の要件は適当なのか。集落営農と呼ばれる集団経営と個別経営の双方を担い手とすることの問題点、などを講義する。

6月18日
WTOと農業問題: 現在WTO交渉は中断されているが、交渉の大きな焦点は農業問題である。農業はWTOの前身であるGATTの時代からしばしば国際経済摩擦の原因となってきた。農業貿易のあり方をめぐりどのような交渉が行われ、どのような方向で決着が見られるのか、WTO交渉の行方を考える。

6月25日
WTO交渉が行き詰っている一方で、FTA / EPAの展開が勢いを増している。しかし、日本は諸外国に比べ締結した相手国の数でもその質でも遅れている。ここでも農業の取り扱いが問題とされ、日豪EPAの議論に見られるように国内農業への打撃だけが強調されやすい。日本は農業を含む対外政策をどのように構築していったらいいのかを講義する。

7月2日
これからの日本農業と農業政策: 以上の検討をふまえてこれからの日本農業のあり方とそのための政策を考える。技術の発達と国際化の進展の中で日本農業の真の比較優位をもとめるための条件、制度を議論する。日本のみならずアジアさらには地球全体の繁栄のための資源の効率的利用と農業および農業政策のあり方を考える。

7月9日
筆記試験

成績評価の方法

筆記試験によるが、レポートを課すこともある。

関連項目