国際政治経済U

担当教員

樋渡 展洋

配当学期・曜日・時限

夏学期 金曜 3限

内容・進め方・主要文献等

 国際政治経済とは、政府の対外経済政策や国家間の経済関係を説明する際に、経済的要因を前提に、国際・国内政治の影響を理解する学問で、その分析枠組は―
 
 対外経済政策・国際経済関係 = 政治的独立変数ベクトル + 経済的制御変数ベクトル 

と表現でき、制御変数に関しては経済学の基礎理論に立脚し、独立変数に関しては国際政治や政治学の知見を応用する。本講は、このような国際経済関係の政治的側面に関する最近の理論展開と最新の実証成果を紹介する。
 その際、戦後西側先進諸国を中心に、国内社会経済の安定とそれに立脚した国家間合意による自由貿易や資本移動が拡大した要因として、貿易・投資拡大に伴う経済利得が民主政府下で、合意に基づき安定的に配分されたこと(「埋め込まれた自由主義」)の重要性。近年の貿易・投資の増大に伴う民主政治や市場経済の整備・規範化の重要性。更に、国内民主政や経済法秩序の脆弱性を補完手段としての独立中央銀行や経済協定、国際経済機関参加の重要性など、国際経済関係の規定要因としての国内制度や国際協定に焦点を当てる。この認識は、現下の経済危機の世界的伝播の原因究明のみならず、各国の国内対策と国際連携の特徴と、1930年代との相違を理解する上でも重要であろう。
 このように、経済の国際化に伴い、経済運営と政権維持の両立に迫られた政府の選択肢がどう制約・規定され、それら政府の対立・連携の結果、地域・国際経済関係がどう展開・変容しているかを理解することは、行動主体としての国家・政府が経済政策的合理性と国内政治的妥当性をどう調整するかを考察することであり、それが本講の政策実践的含意であるとともに、本講と国際経済、国際政治、国際経済法科目との補完的相違点である。
講義は下記の要領で進めるが、構成は昨年度と多少ことなる。詳しくは初回にシラバスを配布して説明する。(尚、本年度は例外的に前期の開講となる。)

1. 理論的前提(国際対立・協力の理論、国際・国内政治の連動、民主国際関係)
2. 貿易・投資政策(保護政策規定要因、貿易投資協定、GATT/WTO)
3. 国際金融・通貨政策(通貨政策、通貨危機、IMF救済、資本移動下の経済政策)
4. 経済外交(経済援助と経済制裁、国際経済関係と安全保障関係)

参加者は、教科書の1章相当、計8回程度、A4用紙1枚に要約することが要求される。その内容は講義で確認するため、国際政治経済Iの受講や国際経済、国際政治、統計の予備知識は必要でない。講義は公共政策大学院生のみが対象のため、教科書の理論を更に展開し、かつ最新の実証結果を紹介する高度な内容を準備するが、それに怯まず挑戦し、基礎的なことでも怖じけず積極的に授業中、質問・発言し、納得することが要求かつ歓迎される。

教材等

教科書:Thomas Oatly, International Political Economy, 2nd edition (Peason Longman, 2006)
 
昨年度のシラバスと講義資料は<http://web.iss.u-tokyo.ac.jp/~hiwatari/>からダウンロードできるので参考にすること。講義資料はパワーポイント200シート程度で、統計分析の結果表がほとんどであるが、教室では分かるように丁寧に解説することになる。

成績評価の方法

平常点および(テークホーム)筆記試験

関連項目