沿岸域管理法制度論

担当教員

交告 尚史 ・三浦大介

配当学期・曜日・時限

冬学期  火曜2 限

内容・進め方・主要文献等

基礎理論編
まず、実務上の重要性にもかかわらず行政法学の教育では片隅に追いやられている公物法について、その基礎理論をひと渡り学習する。
その後に、わが国に存在する沿岸域に関する諸法律を外観し、沿岸域の「総合的管理法」の必要性を認識する。
そして、沿岸域の総合的公物管理法の存在しないわが国の現状を前提に、まずは海を「誰が管理すべきか」を中心に検討する。この問題は、「公物管理権の法的根拠をどこに求めるべきか」という理論的課題とぶつかることになるので、それについて公物法において展開されてきた議論を概観する。
次に、沿岸域の法制史として、徳川時代における地先水面の管理形態である「一村専用漁場」の慣習について触れ、明治の近代法導入以降、実質的に行われてきた沿岸域公物管理の法的仕組みを講義し、国、地方公共団体、漁業協同組合、NPO団体等、沿岸域管理にかかわる主体として誰がふさわしいか、また、どのような管理が望ましいかを探求する。
U 個別法・応用編
海岸法の仕組みを概観するとともに、平成12年の法改正の背景を探る。とくに環境保全と利用とが法目的に入ったことの意義を考える。続いて、この講義が「海岸」ではなく、「沿岸域」を対象とすることに鑑み、河川法、森林法、採石法、砂利採取法、都市計画法などの関連法制を順次検討する。
このような法制度の基礎知識が身についた段階で、海岸法や採石法の許認可をめぐる訴訟や、海砂利採取に関する各種の訴訟の事例を取り上げ、単なる法解釈論的な理解に留まらず、事件の背景にある利害衝突の実相を探究し、問題の解決方法を考究する。適宜合意形成論等の専門家をゲストスピーカーとして招き、1つの問題を多角的に理解する能力の涵養に努めたい。

教材等

公物法理論の学習のために、塩野宏『行政法V[第3版]』(有斐閣)を参考書として奨める。

成績評価の方法

平常点とレポートによる。

関連項目