Transitional Justice—真実・正義・和解

担当教員

大串 和雄

単位数・配当学期・曜日・時限

2単位 冬学期 金曜4限

内容・進め方・主要文献等

過酷な弾圧を行なう独裁政権を脱して民主化を達成した国は、過去の独裁政権下で行なわれた人権侵害にどう対処すべきであろうか。内戦を経て和平を達成した社会は、内戦中に行なわれた残虐行為(無防備の民間人の虐殺など)にどう対処すべきであろうか。民主制や和平の安定のために加害者の訴追を断念すべきなのか。それとも二度と同様なことを繰り返させないため、加害者の責任を厳しく問うべきなのか。被害者の要求にはどこまで応えるべきであろうか。また、加害者を訴追しないとしたら、その代わりにどのような措置が採られるべきであろうか。

特に1990年代以降、これらの問題は多くの国際的注目を集めるようになった。その背景には、民主化と和平を達成したラテンアメリカ諸国における加害者訴追の動き、旧ユーゴ紛争とルワンダの虐殺(およびその結果としての国際裁判)、南アフリカのアパルトヘイト撤廃(およびそれに伴う真実和解委員会)などがあった。近年ではこれらのテーマはTransitional Justiceの名でほぼ統一され、多くの実践と研究が積み重ねられている。Transitional Justiceの手段には裁判(国際裁判を含む)、真相究明委員会、公職追放、補償(謝罪などの象徴的補償を含む)などがあるが、それらのどの組み合わせが望ましいのかについて、実践を踏まえて活発な議論が行なわれてきている。

本科目はTransitional Justiceの基本的な知識を習得するとともに、多様な事例や論考を通じて、Transitional Justiceが孕むジレンマについて深い理解を得ることを目的としている。授業は演習形式で行なう。 

使用テキストは現時点(2010年2月)で未定である。履修の関心がある学生は、9月頃に<ohgushi@j.u-tokyo.ac.jp>にテキストを問い合わせてほしい。なお、Transitional Justiceは学際的領域であり、主要アプローチには法学(特に国際法)も含まれるが、使用テキストは政治学、社会学、人類学などが中心になる予定である。たとえば裁判を扱う場合でも、国家の国際法上の責任の内容ではなく、裁判に至る政治プロセスや、裁判が政治や社会や被害者に対してもたらす結果が考察の中心となる。

3月上旬頃に1泊ないし2泊の合宿を行ない、大学院生はTransitional Justiceに関連するテーマまたは事例の報告を行なう。なお、合宿の報告は法学的アプローチでも差しつかえない。

教材等

未定

成績評価の方法

出席、課題の提出、授業への貢献等を総合的に考慮する。

関連項目