ヨーロッパ統合と法3

担当教員

伊藤 洋一

単位数・配当学期・曜日・時限・使用言語

2単位 / 夏学期 / 水曜5限 / 日本語

授業の目標・概要

ヨーロッパ統合の大きな特色は,「法による統合」であることである.その結果,ヨーロッパ各国では,国内法の「ヨーロッパ法化」が近年顕著な現象となっており,EU法の影響を無視して加盟国の国内法を研究することは,次第に困難となってきている.
そのような影響は,近時加盟国の相次ぐ憲法改正にも顕著となってきており,昨年度は,具体例として,2008年のフランス憲法改正事例を取り上げた.しかし,そのような成文法の直接的改正と異なり,一般には知られにくい国内判例の動向も看過できない.そこで,今年度は,加盟国の国内裁判所中,従来EC・EU法に対して最も敵対的と目されていたフランス国務院(Conseil d’État)の,近時の注目すべき動向を取り上げる.
具体的には,フランス国務院のSauvé副長官(なお,フランス国務院長官は,形式的には首相がつとめることとされているが,組織の実質的な長は,副長官である)が,EU法のフランス行政判例判例に対する意義・影響を概観し,積極的に受け止める立場を表明した注目文献である上記文献を講読することにより,ヨーロッパ法と国内法との間の影響関係の実際,ヨーロッパ行政法の形成過程につき考察する予定である.

授業のキーワード

EU法, ヨーロッパ法, EU, ヨーロッパ行政法, フランス行政法

授業計画

第1回 イントロダクション:授業の趣旨説明,ヨーロッパ法研究に関する調査方法・文献案内,報告者の分担決定を行う.
第2回 参加者による報告開始.
なお,第3回以降については,本授業の性質上,現時点では各回毎の内容記述をすることはできない.参加者の人数,語学力等により,進度に違いが出てくることが当然予想されるからである.

授業の方法

本演習では,下記フランス語文献を,特に参加者の分担を事前に決めることなく,講読する.

成績評価方法

平常点による。

教科書

本演習では,下記の文献を講読する予定(但し,開講までに更に新しい適当な文献が現れた場合には変更の可能性あり).

Sauvé, Jean-Marc, Le juge administratif, la démocratie et l'Union européenne, Revue du Marché commun et de l'Union européenne 2010, no 540, p. 413-422.

履修上の注意

上記文献は,その内容上,フランス公法およびヨーロッパ法に関する一応の知識(法源,政策決定過程等)を前提して書かれているので,できればヨーロッパ法の授業に出席するか,適当な概説書を予め読んだ上で,本演習に出席することが望ましい.
なお,フランス語文献読解の訓練も,本演習の重要な目的の一つである.本格的なヨーロッパ法研究には,英語だけでは到底十分とは言えない.フランス語を読む意欲のある者の参加を希望する.

関連項目