国際政治経済 II

担当教員

樋渡 展洋

単位数 / 使用言語 / 配当学期

2単位 / 日本語 / 冬学期

授業の目標・概要

 現在の国際政治経済の特徴は政治と経済、政策決定の国際要因と国内要因が交錯することにある。戦後の西側先進諸国の政治経済は「埋め込まれた自由主義」と称され、民主政治の枠内で国内政策による経済発展と社会安定、それに立脚した国家間合意による自由な貿易・資本移動の体制を発展させてきた。近年では、社会主義の崩壊により、民主政体と市場経済の拡大・規範化がもたらされ、政治と経済、政策の国際要因と国内要因の連動関係が一層強化されたといえる。
このような現状を背景に、国際政治経済とは、政府の対外経済政策や国家間の経済関係を理解する学問で、その際に、経済的要因を前提に、国際・国内政治の影響について究明する。その分析枠組は― 

 対外経済政策・国際経済関係 = 政治的独立変数ベクトル + 経済的制御変数ベクトル 

と表現でき、制御変数に関しては経済学の基礎理論に立脚し、独立変数に関しては国際政治や政治学の知見を応用する。本講は、このような国際経済関係の政治的側面に関する最近の理論展開と最新の実証成果を紹介する。
 その際、次の諸点が強調される。即ち、戦後西側諸国を中心に、国内社会経済の安定とそれに立脚した国家間合意による自由貿易や資本移動が拡大した要因として、貿易・投資拡大に伴う経済利得が民主政府下で、合意に基づき安定的に配分されたこと(「埋め込まれた自由主義」)の重要性。近年の貿易・投資の増大に伴う民主政治や市場経済の整備・規範化の重要性。更に、国内民主政や経済法秩序の脆弱性を補完手段としての独立中央銀行や経済協定、国際経済機関参加の重要性、である。 
 このように、国際経済関係の規定要因としての国内制度や国際協定に焦点を当てることは、経済危機や経済開放、構造改革の世界的伝播の原因究明のみならず、各国の国内経済政策と国際経済連携の特徴を理解する上でも重要であろう。そして、経済の国際化に伴い、経済運営と政権維持の両立に迫られた政府の選択肢がどう制約・規定され、それら政府の対立・連携の結果、地域・国際経済関係がどう展開・変容しているかを理解することは、行動主体としての国家・政府が経済政策的合理性と国内政治的妥当性をどう調整するかを考察することであろ。この調整関係の理解が本講の政策実践的含意であるとともに、本講と国際経済、国際政治、国際経済法科目との補完的相違点である。

授業のキーワード

Embedded liberalism,民主政体,貿易投資協定,国際経済機関(世銀,IMF,WTO),資本移動,通貨・金融危機,政治的景気循環,経済開放・構造改革, 経済援助・制裁

授業計画

講義は下記の要領で進める。詳しくは初回にシラバスを配布して説明する。
1. 理論的前提(国際対立・協力の理論、国際・国内政治の連動、国際政治経済と国内体制)
2. 貿易・投資政策(貿易政策規定要因、貿易投資協定、GATT/WTO)
3. 国際金融・通貨政策(通貨政策、通貨危機、IMF救済、資本移動下の経済政策)
4. 経済外交(経済援助と経済制裁、国際経済関係と安全保障関係)

授業の方法

 授業は基本的には講義形式であるが、少人数のため、受講者とのやり取りを重視する。
 また、参加者は、適宜、教科書の1章相当、計7回程度、A4用紙1枚に要約して提出することが要求される。その内容は講義で確認するため、国際政治経済Iの受講や国際経済、国際政治、統計の予備知識は必要でない。
 講義は公共政策大学院生のみが対象のため、教科書の理論を更に展開し、かつ最新の実証結果を紹介する高度な内容を準備するが、それに怯まず挑戦し、基礎的なことでも怖じけず積極的に授業中、質問・発言し、納得することが要求かつ歓迎される。
 昨年度など過去のシラバスと講義資料はからダウンロードできるので参考にすること。講義資料はパワーポイント200シート程度で、統計分析の結果表がほとんどであるが、教室では分かるように丁寧に解説することになる。

成績評価方法

平常点、小レポート提出、および(テークホーム)筆記試験

教科書

Thomas Oatly, International Political Economy, 4th edition (Longman, 2009)

参考書

Jeffry A. Frieden, David A, Lake, and J. Lawrence Broz, International Political Economy, 5th edition (W.W. Norton, 2009)

関連項目

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