ヨーロッパ統合と法1

担当教員

伊藤 洋一

単位数 / 使用言語 / 配当学期

2単位 / 日本語 / 夏学期

授業の目標・概要

ヨーロッパ統合の大きな特色は,「法による統合」であることである.その結果,ヨーロッパ各国では,国内法の「ヨーロッパ法化」が近年顕著な現象となっており,EU法の影響を無視して加盟国の国内法を研究することは,次第に困難となってきている.
しかしながら,そのような影響関係は,ヨーロッパレベルからの一方的な関係ではなく,実は双方向的なものである点に注意する必要がある.近年ヨーロッパにおいて,「裁判所間の対話(dialogue des juges)」との表現が頻繁に使用されるようになってきたのは,そのような相互的影響関係の重要性が広く認識されるようになってきたことを反映している.このようなヨーロッパの動向は,経済の「グローバル化」が喧伝される一法で,法制度の「ガラパゴス化」が揶揄される日本の法曹にとって,大きな刺激になるであろう.
今年度は,「裁判所間の対話」という表現の生みの親であるフランス国務院(Conseil d’État)のB. Genevois元争訟部長が,同じく国務院からヨーロッパ人権裁判所長官となったJ.-P. Costaの記念論文集に寄稿した論説を取り上げる.ヨーロッパ人権判例のフランス行政判例に対する意義・影響を扱う上記文献は,ヨーロッパ法と国内法との間の影響関係の実際,ヨーロッパ行政法の形成等につき考えるのに格好の材料と思われるからである.

授業のキーワード

ヨーロッパ統合,ヨーロッパ人権法,ヨーロッパ法,ヨーロッパ人権裁判所

授業計画

本演習では,上記フランス語文献を,特に参加者の分担を事前に決めることなく,講読する予定.

授業の方法

演習.

成績評価方法

平常点による.

教科書

本演習では,下記の文献を講読する予定(但し,開講までに更に新しい適当な文献が現れた場合には変更の可能性あり).

Genevois, Bruno, Cour européenne des droits de l’homme et juge national : dialogue et dernier mot, in Titiun, Patrick (éd.), La conscience des droits : Mélanges en l’honneur de Jean-Paul Costa, Paris, Dalloz, 2011, pp. 281-292.

履修上の注意

上記文献は,その内容上,フランス公法およびヨーロッパ法に関する一応の知識(法源,政策決定過程等)を前提して書かれているので,できればヨーロッパ法の授業に出席するか,適当な概説書を予め読んだ上で,本演習に出席することが望ましい.
なお,フランス語文献読解の訓練も,本演習の重要な目的の一つである.本格的なヨーロッパ法研究には,英語だけでは到底十分とは言えない.フランス語を読む意欲のある者の参加を希望する.

関連項目

Courses