ヨーロッパ統合と法2

担当教員

伊藤 洋一 / 網谷 龍介

単位数 / 使用言語 / 配当学期

2単位 / 日本語 / 冬学期

授業の目標・概要

ヨーロッパ諸国法の「ヨーロッパ法化」現象がとみに指摘されるようになってきている.その原因としてEU法の影響が最も重要であることは言うまでもないが,ヨーロッパ人権条約の影響をも無視することはできない.また,ヨーロッパ人権条約は,組織的には全く別個の存在であるにもかかわらず,EUにとっても重要な意義を持っており,両者の関係は,近年複雑な様相を呈している.したがって,ヨーロッパ人権法の研究は,狭義のヨーロッパ法研究にとっても重要な課題である.
しかし,現在ヨーロッパ人権条約の加盟国数は40カ国を超えており,比較法研究の必要性および重要性には疑問が無いにも拘わらず,人権条約の国内法への影響に関する実証的研究を行うことは容易ではない.
下記文献は、ヨーロッパ人権条約の加盟国から18カ国を選択した上で,人権条約の国内法への影響を検討した,最近の大規模な共同研究の成果であり,国内機関の範囲を裁判所に限らず,立法・行政にまで広げた点で「法と政治学」の事例研究と見ることも可能である.
本講では,分量的な制約を考慮し,同書から一定本数のナショナル・レポートを選択した上で,それらを手がかりとして,ヨーロッパ人権裁判所と加盟国の国内機関(裁判所,立法,行政等)との相互影響関係を具体的に検討することにより,ヨーロッパ法に対する理解を深めることを目的としている.

授業のキーワード

ヨーロッパ人権条約,ヨーロッパ人権法,ヨーロッパ法,EU法,国際人権法

授業計画

第1回 イントロダクション:授業の趣旨説明,ヨーロッパ法研究に関する調査方法・文献案内,報告者の分担決定を行う.
第2回 参加者による報告開始.

なお,第3回以降については,本授業の性質上,現時点では各回毎の内容記述をすることはできない.参加者の人数,語学力等に応じ,担当部分の割り振りを考慮する必要があるのみならず,報告・議論の展開具合により,進み具合に違いが出てくることが当然予想されるからである.

授業の方法

下記文献から約300頁強の報告書(序章,イギリス・アイルランド,フランス・ドイツ,オランダ・ベルギー,ロシア・ウクライナおよび終章)を選び,参加者(参加者の人数によっては,グループ)が分担して報告するという形式で進める予定である.

成績評価方法

授業における報告およびレポートによる

教科書

Keller, Hellen & Alec Stone Sweet (eds.), A Europe of Rights: The Impact of the ECHR on National Legal Systems, Oxford, Oxford UP, 2008, xl, 852 p.

履修上の注意

初回に配付する教材準備の必要があるので,受講希望者は,2012年9月7日(金)までに,以下の要領で電子メールにより,参加を希望する旨連絡すること.また,初回開講時に報告者の決定を行う必要があるため,事前の受講希望連絡の無い希望者については,参加を認めがたい.この点注意すること.
(1) 伊藤宛(yito@j.u-tokyo.ac.jp)に電子メールで連絡すること
(2)メール標題は「2012年冬学期・ヨーロッパ統合と法参加希望(参加希望者の氏名・所属)」とすること.
(3) メール本文には,連絡先電話番号をも記載すること.

使用する教材は英語文献ではあるが,その性質上,国内法に関する基本的な知識が必要かつ有益である.また,教材の性質上,EU法・ヨーロッパ人権法に関する基本的知識が不可欠であるので,予めヨーロッパ法を聴講しておくか,信頼できる概説書を読んでおくことが望ましい.

関連項目

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