事例研究(政策環境検討手法としてのシナリオプランニング:理論と実践)

担当教員

角和 昌浩

単位数 / 使用言語 / 配当学期

2単位 / 日本語 / 夏学期

授業の目標・概要

たいがいのみなさんはいずれ学校の外の世界に出て働き始めます。ご健闘を祈る。さて、将来、自分が所属する組織(官であれ民であれ)の内側にあって、主体的に情報を集め、自分自身で考えはじめ、直観力と洞察力を持って大きな新しい課題に取り組むことができる、そのような力をつけていただくための一技法としてシナリオプランニングをご紹介したい。

シナリオプランニングとは、未来研究手法の一種。シナリオとは、起こり得る未来を説明するストーリーのこと。つまりそれは、今後の重要なイベントと主要登場人物達、そして彼らがどんな意図を抱いているかを特定するものであり、また世界がどのような仕組みで動いているかを伝えようとする。われわれはシナリオの作成および活用を通じて、未来において直面するかもしれない困難について探求することが可能となる。われわれは、自身がもっとも不安に思っている未来の不確実性について考えるため(あるいは、自身が今後注意すべきことを発見するため)、また、それらの不確実な要素がどのような形で現実に起こるかについて深く掘り下げて考えるために、シナリオプランニングを試みる。こういった問いに対しては単一の回答は存在しないため、シナリオプランニングは、複数の未来像=シナリオを作る。

授業目標を5つ立てる。すなわち、①シナリオプランニングの理論と型式を理解する。②シナリオプランニング手法が政策環境分析あるいはビジネス環境分析に活用可能なことを理解する。③シナリオプランニングの作業工程を実習する。本年度の実習テーマは「シェールガス・オイル革命の拡がりと日本」、④ワークショップ・ファシリティションの技術を体験的に実習する。⑤シナリオ作品を試作する。
すなわちこの授業は受講者に知識を伝えようとするものではない。未来変化を考えるための技法を実践的に習得してもらう。実習テーマ「シェールガス・オイル革命の広がりと日本」を、深く掘り下げる趣旨ではない。が、数ヶ月間シェールガス・オイル問題について自身で調査し、また複数の専門家から学ぶ機会が得られる。
この授業は、今期はじめて行ないます。失敗があるやもしれないが、全力で運営をしましょう。

授業のキーワード

シナリオプランニング,確実性と不確実性,探索的シナリオ,規範的シナリオ,プレイヤー/アクター,動因(ドライビングフォース),ストーリー,射程,Plausibility,Probability,戦略的意思決定,ワークショップ,ファシリティション,シェル,シェールガス,シェールオイル,国益

授業計画

大まかに3のブロックに分ける。第一は概論。シナリオプランニングの理論と実践について講義とグループ討議、およびシェールガス・オイル革命の拡がりとその日本への影響についての概説と予備調査。第二はシェールガス・オイル問題について外部専門家の講義(4-5回)。ここでは、毎回の授業のなかで専門家を交えて、その場でシナリオを試作してみる。第三は受講者によるシナリオ作品の制作。グループ作業で進める。

授業の方法

大人数の受講者に向けた講壇講義ではありません。講義とグループ討議、そして自習(場合により宿題)の併用。 「シェールガス・オイル革命の拡がりと日本」のテーマに知見ある外部講師が複数(4,5名)招かれる。外部講師陣はみなさん、シナリオプランニング手法を理解・実践されている方々です。

成績評価方法

出席と授業中の貢献を重視。グループ作業を行なうため、遅刻の場合は、原則、出席と認めがたい。
担当教員は、主体的に情報を集め、自分で考えはじめ、直観力と洞察力を持って行動できること、そのような力がこの授業を経て伸ばすことが出来た受講者を特に評価したい。

教科書

角和昌浩 「シナリオプランニングの実践と理論」第1回~第5回、IEEJ、2005-2006
城山英明、鈴木達治郎、角和昌浩 『日本の未来社会 エネルギー・環境と技術・政策』 東信堂、2009
キース・ファンデル・ハイデン『シナリオ・プランニング -戦略的思考と意思決定』、ダイヤモンド社 1998

参考書

ピーター・シュワルツ『シナリオプランニングの技法』、東京経済新報社、2000
『Scenarios: An Explorers’ Guide』、 Shell International, 2003
山口健介、大山卓、角和昌浩、城山英明 「タイ国の未来:シナリオ・スタディ」、SEPP/IR3S、2012

履修上の注意

受講者は、授業にインタネット接続ができるラップトップを持ちこむこと。各自で授業中にシナリオ作成作業をすすめる授業を行なうことがある。
ときどき、宿題を出すかもしれない。
遅刻、欠席は好ましからず。が、きちんとした理由があれば認めます。

関連項目

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