立法学

担当教員

塩田 智明

単位数 / 使用言語 / 配当学期

2単位 / 日本語 / 冬学期

授業の目標・概要

立法活動は、従来の法令によっては解決できない公共的な問題について、特定の政策目的の下に新たな法規範を定立し、これによってその解決を図ろうとするいとなみである。そして法制立案とは、こうした立法活動と形影相伴いながら、ときに法と政治の間をたゆたいながら、政策を法案に転換する仕事だといえよう。この法制立案に関する実務的ノウハウは、戦前戦後を通じて長期間「秘伝」とされてきたが、近年、立法の実務家と研究者とが共同してこれを体系化する試みが精力的になされている。この授業の目的は、こうした実践的立法学の立場から、「立法の現在」を多面的に理解させることにある。また、立法活動や法制立案の実例を豊富に取り上げつつ、法案等の起案に必要な知識・技能を修得させることにも努める。法制立案担当者(Legislative Drafter)の仕事の大半は、起案(Drafting)にあるのではなく、対話を通じた政策の精密化であることに鑑み、授業においても対話することを心がけたい。
なお、授業中に小テスト又は宿題を課すことがあり、その提出実績を平常点に加味する。

授業のキーワード

立法,国会,議員,法制,政策,政治

授業計画

第1回 立法過程1(総論) 現在の日本の立法過程を概観し、政策の立案から法律の制定に至るまでの中間に位置する法制立案とはどういう仕事であるかを理解させる。
第2回 立法過程2(政策形成プロセス) 法案の提出権を有する各議院の議員及び内閣が、どのように政策を形成していくのかを理解させる。
第3回 立法過程3(法案審議プロセス) 各議院の議員及び内閣から提出された法案が、国会においてどのように審議されるかを理解させる。
第4回 立法基礎1(法律事項) 法律が当然有するべきとされてきた性質とその逸脱事例を紹介しながら、法律に定めるべき事項とは何かについて考えさせる。
第5回 立法基礎2(立法事実) 立法の基礎となる事実に関する従来の議論を整理しながら、立法による政策実現の必要性がどのように生じるのかについて考えさせる。
第6回 立法基礎3(立法者意思) 立法者の意思とは何かに関する議論を通じて、制定法律に込められた政策目的がどのように受容されていくかについて考えさせる。
第7回 立法技術1(序論) 立法の内容を表す最も適当な言語的表現をするために必要な用字・用語や法文書式上の基本的な約束事について理解を進める。
第8回 立法技術2(法律の新規制定) 新規制定法を題材に、その構成、規定の順序その他一般的事項について理解を進める。法律の公布と施行、主務大臣などについても、ここで触れる。
第9回 立法技術3(法律の改正・廃止) 既存の法律を改廃する法律を題材に、改正や廃止の仕方、その際の留意事項について理解を進める。
第10回 事例研究1(定義規定) 具体的な事例に即し、政策遂行上の焦点となっている問題や事物を、どのような定義の仕方でとらえるべきかを考えさせる。
第11回 事例研究2(政策遂行に必要な資源) 具体的な事例に即し、法案に込められた政策目的を実現するため、必要な人的・物的資源をどのように確保するべきかを考えさせる。
第12回 事例研究3(経過措置) 具体的な事例に即し、新たに定められた制度を円滑に定着させるため、どのような事項を考慮するべきかを考えさせる。
第13回 総括(立案の倫理と政治性) 政策を法案に転換させるプロセスに位置する法制立案担当者の判断が政治性を帯びざるを得ないこと、それゆえ法制立案担当者には特別の倫理が要求されることを理解させる。

授業の方法

双方向的授業を中心に行う

成績評価方法

・筆記試験を 行う
A方式(2時間)
・平常点を 考慮する
・レポートを 課さない
・成績を A+・A・B・C(2012 年度以降の入学者はC+・C-)・F で評価する

教科書

「立法学講義<補遺>」(大森政輔・鎌田薫 編 商事法務 2011年)を教科書とする。立法技術の参考書としては、次のようなものがある。
・「条文の読み方」(法制執務用語研究会 著 有斐閣 2012年)
・「新訂 ワークブック法制執務」(法制執務研究会 編 ぎょうせい 2007年)
なお、講義のレジュメ、関係資料は、CFIVE等において提示する。

その他留意事項

毎年開講

関連項目

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