法典なき民事裁判 - 明治前期の司法近代化 3
担当教員
和仁 陽
単位数 / 使用言語 / 配当学期
2単位 / 日本語 / 冬学期
授業の目標・概要
最初の本格的民事手続法典である明治民事訴訟法の施行は明治24(1891)年、実体法典である明治民法に至っては、19世紀も押し詰まった明治31(1898)年にならないと動き出さなかった。明治初年からそれまで、裁判官はどうやって判決をしていたのだろうか? 法典なき時代の民事裁判実務のあり方を、民事判決原本を原史料のDB画像によって会読しながら探求しよう。あわせて、公文書としての司法資料の保存体制の過去・現在・未来を考える。
授業のキーワード
明治, 裁判, データベース, 公文書管理保存, 司法制度, 近代化
Meiji Era, database, archives, civil judgments, modernisation
授業計画
明治初年以降の民事判決原本は、各地の裁判所に連綿と保存されてきたが、紆余曲折を経て、現在は、国立公文書館の保管するところとなっている。このうち、明治23年までのものについては全てデータベース化され、居ながらにして鮮明な画像を見ることができる(国際日本文化研究センター「民事判決原本データベース」[URI は関連ホームページ欄参照])。
本演習では、教室でこのDBにアクセスしながら、さまざまの判決を会読・解読してゆく作業を中心とする。
毛筆で書かれた明治の文章であるが、過去の法科大学院の参加者のご様子からすると、それほど抵抗なく入ってゆけると思う。
明治前期の裁判制度・司法制度については、授業中に必要に応じ説明するので、格別の予備知識は要さない。
取り上げる論点を例示すると以下の通り:
1) 公文書管理法制の整備と近代史資料、とりわけ司法資料の保存利用体制
2) 民事判決原本 DB を例とする資料の電子化
3) 司法制度・裁判制度の「近代化」過程のミクロ的考察
4) 実体法典なき時期の民事裁判の判断過程
5) 明治前期民事判決に見られる外国法の痕跡
6) 条理規範の存在構造
授業の方法
教室で、民事判決原本データベースにアクセスし、参加者各自の関心に応じ、イマジネーションを駆使してさまざまなキーワードを提案してもらい、それらで DB を検索して、ヒットした面白そうな判決を解読してゆく。
法科大学院・公共政策大学院の学生は、十分な研究目的があれば独立に利用申請ができ、利用資格があると、教室外でも史料に接することができる。参加者には利用登録をしていただく。手続に一箇月内外時間がかかるのと、注意点があるので、申請希望者は早めに大学院係を通じ和仁まで連絡をください。
成績評価方法
平常点による。教室における解読作業とブレインストーミングへの積極的な参加が要求される。レポートを義務づけることはしないが、志願して小報告してくださるのは大歓迎です。
成績評価は合否でおこなう。
教科書
戦前期の民事判決原本についての入門書である、林屋礼二・石井紫郎・青山善充編『図説・判決原本の遺産』(1998 信山社)を各自購入、あらかじめ読んでおいて授業にも持参してください。
崩し字解読の手引きは沢山あるが、自分と相性のよいものを座右にしておくとよいでしょう。どれがよいか迷う、というのであれば、児玉幸多編『くずし字用例辞典』(東京堂出版)。
履修上の注意
1・2・3年生対象。
過去に「法典なき民事裁判 - 明治前期の司法近代化 1/2」の単位を取得していても履修可能です。
関連ホームページ
http://www.nichibun.ac.jp/graphicversion/dbase/minji_j.html
その他留意事項
来年度の開講は未定。
法科大学院と合併。