ヨーロッパ統合と法4
European Integration and Law 4

担当教員 / Instructors

伊藤 洋一/網谷 龍介

配当学期 / 使用言語 / 単位数 / Term / Language / Credits

A1A2 / 日本語 / 2

授業の目標・概要 / Objectives

EU加盟国における,国内法の「ヨーロッパ法化」が顕著な現象として注目されるようになって既に久しい.このような現象は,EC法における直接適用性・国内法に対する優越原理の形成と不可分である.
しかし,ヨーロッパ法といえども,一日にして形成されたものではない.往々にして見受けられるデマゴーグの主張するところとは異なり,ヨーロッパ法は,決して加盟国と全く無関係に「ブリュッセル」が形成してきたものではなく,既に半世紀にわたる,EC裁判所と国内裁判所との相互影響関係,近年頻繁に使われるようになった言葉を用いれば「裁判官の対話」を通じて形成されてきたものである.
残念ながら,日本における従来のヨーロッパ法研究は,ともすればヨーロッパレヴェルの動向のみを対象とし,その動態的な性格を軽視しがちであったが,ヨーロッパ法は,決してEC裁判所(リスボン条約発効以後は,EU裁判所と改称)が象牙の塔の中で無から作り上げたものではなく,加盟国の国内裁判所との間の相互的影響のもとに形成されてきたものであることを忘れてはならない.換言すれば,国内法の「ヨーロッパ法化」は,一面では,ほかならぬ加盟国の国内機関の手によるものなのである.

今年度取り上げる文献は,近年の「ヨーロッパ法化」現象の基礎をなすEC法の優越につき,それが,なぜ加盟国によって長期的に見た場合,結局受容されてきたのかという問題を,ドイツとフランスに焦点を絞って検討した,「法と政治学」の事例研究である.同書の主張には,刊行当時の知見を前提とした場合でも,支持し難い点が見受けられるのみならず,既に公刊から15年近く経た現在では,その後の研究・判例の展開等によって大きく修正さるべき点も存在する.しかし,同書の立てた研究課題自体は,ヨーロッパ法の歴史的形成を解明しようとした,学問的試みとして,現在でも批判的な再検討に値すると思われる.
そこで,上記文献を手がかりとして,EC裁判所と両国の国内裁判所との相互影響関係を具体的に検討することにより,独仏法およびヨーロッパ法に対する理解を深めることが,本講の目的である.

授業のキーワード / Keywords

EU法,フランス法,ドイツ法,EU裁判所,ヨーロッパ法

EU Law, French Law, German Law, European Court of Justice, European Law

授業計画 / Schedule

第1回 イントロダクション:授業の趣旨説明,ヨーロッパ法研究に関する調査方法・文献案内,報告者の分担決定を行う.
第2回 参加者による報告開始.
なお,第3回以降については,本授業の性質上,現時点では各回毎の内容記述をすることはできない.参加者の報告による演習形式をとる以上,参加者の人数,語学力等に応じ,担当部分の割り振りを考慮する必要があるのみならず,文献を正確に読み,内容を批判的に検討・報告すること自体が,授業の目的だからである.

授業の方法 / Teaching Methods

下記文献所収の論文を,参加者(参加者の人数によっては,グループ)が分担報告し,議論する形式で進める予定である.

成績評価方法 / Grading

授業における報告およびレポートによる.
筆記試験を行わない
平常点を考慮する
成績をA+・A・B・C+・C−(2011年度以前の入学者はC)・Fで評価する

教科書 / Required Textbook

Alter, Karen J., Establishing the Supremacy of European Law: The Making of an International Rule of Law in Europe, Oxford, Oxford UP, 2001, xxvi, 260 p. [ISBN 978-0-19-926099-7]

注意: 初回に報告分担者の決定を行うので,教材を事前に入手の上,開講時に必ず持参すること.

履修上の注意 / Notes on Taking the Course

[受講希望者に対する注意事項]
初回の報告分担決定等につき事前準備の必要があるので,受講希望者は,2015年8月31日(月)までに,以下の要領で電子メールにより,参加を希望する旨必ず連絡すること.
例年,特に公共政策大学院生の中に,上記の事前参加連絡をせずに,授業初回に出席する者が見受けられるが,事前の受講希望連絡の無い希望者については,参加を認めがたいので,この点くれぐれも注意すること.

(1) 伊藤宛(yito@j.u-tokyo.ac.jp)に電子メールで連絡すること
(2)メール標題は「2015年冬学期・ヨーロッパ統合と法参加希望(参加希望者の氏名・所属)」とすること.
(3) メール本文には,連絡先電話番号をも記載すること.


使用する教材は英語文献ではあるが,その性質上,国内法に関する基本的な知識が必要かつ有益である.また,教材の性質上,EU法・ヨーロッパ人権法に関する基本的知識が不可欠であるので,予めヨーロッパ法を聴講しておくか,信頼できる概説書を読んでおくことが望ましい.

その他留意事項 / Miscellaneous Information

毎年開講するが,年度により内容は異なる.

関連項目 / Related Resources