交渉と合意
Negotiation and Consensus Building

担当教員 / Instructors

松浦 正浩

配当学期 / 使用言語 / 単位数 / Term / Language / Credits

S1 / 日本語 / 2

授業の目標・概要 / Objectives

【受講者数制限あり。登録方法は3月中旬に掲示予定。定員を超える場合初回講義後に抽選予定。】

「交渉」というと何か身構えてしまう人も多いでしょうが、実際のところ誰もが毎日交渉を行っています。たとえば家庭内での会話(例えば「今夜のご飯は何にしようか?」)なども一種の交渉です。また同時に、国家間で条約を締結する際にも交渉は行われています。これら多様な「交渉」を幅広くとらえ、それらの共通点から見出された基本的な枠組みが「交渉学」です。幅広い分野の現場で適用可能であるため、現在では全米各地の専門職大学院(公共政策大学院、法科大学院、ビジネススクール、都市計画大学院など)で教えられています。

「交渉」のスキルは生まれもってのものであって、勉強や練習をしても改善は難しいと思い込んでいる人が多いと思われますが、実際はそうではありません。「交渉学」の枠組みを用いて反省することで、交渉に係る問題の正しい理解が可能となり、「交渉学」を念頭に実際の交渉を進めれば、適切な問題改善へとつなげることができます。また、「交渉」の最終目標は相手を打ち負かすことではありません。むしろ、自分と交渉相手が今後共存できる方法をお互い納得できる形で見つけることが交渉の目標です。ですから、今回の講義で扱う「交渉学」のことを「Win-Win交渉」などと呼ぶ人もいます。また、今回の講義は公共政策における交渉と合意に焦点を当てます。個人間、企業間で行われる交渉と比べ、公共政策に関する交渉と合意形成は、その特性が大きく異なります。特に、ステークホルダーの特定、配分の公正性に対する要請、価値観に根ざした論争と熟議による対応、科学的不確実性への対応などについてこの講義を通じて十分理解を深めていただきたいと思います。なお、講義では環境政策や都市計画を中心とした事例を用いて議論を進めます。

授業のキーワード / Keywords

交渉学,合意形成,紛争解決,コミュニケーション,熟議,実践的

Negotiation, Consensus Building, Dispute Resolution, Communication, Deliberation, Practical

授業計画 / Schedule

イントロダクション(講義概要の説明) (4/7)
第1部 交渉分析の基礎と応用(交渉学)
 第1回 交渉学序論と分析の方法論 (4/9)
 第2回 交渉シミュレーション「桜井さんvs.小池さん」(4/14)
 第3回 複数イシュー交渉と実践上の課題 (4/16)
 第4回 交渉シミュレーション「水無月開発」(4/21)
第2部 公共政策形成過程における交渉と合意形成
 第5回 公共政策における交渉と合意形成の理論 (4/28)
 第6回 公共政策における交渉と合意形成の実践 (4/30)
 第7回 ファシリテーション手法 (5/7)
 第8回 交渉シミュレーション「ハーボコ」(予定) (5/12)
 第9回 「ハーボコ」のふりかえり、中間テスト (5/14)
 第10回 交渉シミュレーション(科学に係る交渉) (5/19)
 第11回 価値観に基づく公共紛争とその解決 (5/21)
第3部 まとめ (5/26)

授業の方法 / Teaching Methods

本講義はスキルの体得に主眼を当て、米国の専門職大学院で長年行われている「交渉学」の授業とほぼ同じ形式で進行します。交渉スキルは自動車の運転と同じく、学習と実践を繰り返すことで始めて体得できるものです。講義では複数の交渉シミュレーション演習を用い、学習した「交渉学」の理論や方法論を実際に自分自身で試していただきます。また、現場への適用を常に念頭に置きながら講義に参加していただくため、ディスカッションへの参加を重視します。本講義は聴講の場ではなく、むしろ講師を含めた「学びあいの場」だと考えて参加してください。

成績評価方法 / Grading

平常点(出席等)30%、ふりかえりレポート(3回)計30%、中間テスト15%、最終レポート25%

教科書 / Required Textbook

松浦正浩.実践!交渉学:いかに合意形成を図るか、ちくま新書、2010.
フィッシャー&ユーリー.ハーバード流交渉術、三笠書房、1990.
サスカインド&クルックシャンク.コンセンサスビルディング入門、有斐閣、2008.

履修上の注意 / Notes on Taking the Course

出席について:初回を除く3回以上の無断欠席(やむを得ぬ事情による欠席で教官の了承を得た場合はこのカウントに含まない)は単位取得の意思がないものと判断する。

言語について:受講者は、交渉演習を日本語で行うため日本語による対話およびレポートの執筆ができる必要がある。

関連ホームページ / Related Websites

http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/courses/index.htm

その他留意事項 / Miscellaneous Information

S1/S2タームの火曜3限にも同じ内容で開講(重複履修不可)

関連項目 / Related Resources