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公共経済政策ワークショップ

2004年5月7日

「 定期借家権創設の経緯 在野からの政策形成 」

福井 秀夫 (政策研究大学院大学教授)

fukui1 4回目の公共経済政策ワークショップでは、政策研究大学院大学の福井秀夫教授をお招きし1999年に成立した定期借家権創設に関して講演をして頂いた。以下に、定期借家権創設の背景、法改正への具体的な活動、議員立法に向けての活動と順を追って説明する。

 

定期借家権創設の背景

 1941年に借地借家法に正当事由制度fukui2が追加された。この制度は、借り手を借家から追い出されにくくする効果一度借りた借り手の家賃の値上げを難しくする効果があった。その結果、長年にわたって住み続けるファミリー向けの貸家の供給が減少していく事となった。定期借家権の創設は、ファミリー向け借家の供給を増加させる効果をねらったものである。

法改正への具体的な活動

建設省に勤務していた1989年当時、福井氏は、公文書として始めて正当事由制度の改善を提言した(住宅宅地審議会市街地住宅小委員会中間報告)。そして、1994年には福井氏がジュリストにて「借地借家の法と経済分析上・下」を発表し、これが現在ある定期借家権の元となった。その後、経済学者および法学者を含むメンバーで構成された研究会が開催され、法務省においても研究会が設置されたが、これは民法学者のみのもので、定期借家権創設に伴う弊害への議論が中心であった。しかし、1996年に法務省側から、定期借家制度創設を否定する根拠がないということを認める内容の発言があったことが法改正への弾みとなった。

 

議員立法に向けての活動

1997年からは、福井氏らの学者メンバーと自民党ほかの議員との二人三脚で法案の議員立法での成立へと向かい始めた。そして、論理とデータによる説得の繰り返し、賛同者を増やすこと等が法案成立に向けて重要であった。また、政権交代による苦労などもあった等のことを話された。

 

以下に、行われた質疑応答のいくつかを簡単に紹介する。

fukui3 Q:将来的には借家は全て定期借家契約になるのか?

A:選択肢は多いほうがいい、並存する状態を維持していく。

Q:定期借家権問題を始めようと思ったきっかけは?

A:入省2年目(建設省)における経済研修の際に岩田規久男先生の講義に感銘を受けたのがきっかけである。

 

Q:定期借家権創設に伴う弱者保護(契約が難しくなる可能性のある人々)が出ると思うがどうか?

A:それは、福祉のサービスで別に考えるべきであり定期借家権を否定する根拠と考えてはいけない。fukui4