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公共経済政策ワークショップ
2004年5月21日
「 国鉄改革と公共政策 」
松田 昌士 (JR東日本会長)
第7回目の公共経済政策ワークショップでは、スピーカーとしてJR東日本会長である松田昌士氏をお招きし、日本の『国鉄改革と公共政策』をテーマに講演をして頂いた。
現在の社会状況について
戦後の復興と発展に関して1960年代から70年代頃までは政府主導という形が重要な役割を果たした。しかし現在は官庁がプレイヤーとなって動く時代ではない。
国鉄改革
現在、世界各国で鉄道経営のあり方について活発に議論がなされており、経営改革の検討が進められている。そのようななか、日本で行われた「国鉄改革」は、成功モデルとして高い注目を集めている。国鉄は昭和39年から赤字に転落し、国鉄末期には、長期債務は約25兆円となり、潜在的な債務も含めると国鉄の処理すべき債務の総額は約37兆円にまで膨れ上がった。その背景として、高度成長期を迎えた日本における自家用車・航空機などの代替交通機関の発達も一因であるが、最大の原因は公社制度と全国一元型組織という構造的な問題から派生する「国営企業体質」にあった。そして、このような状況にあった国鉄の分割民営化を行うことができた理由として2つが挙げられる。一つは、国鉄の経営状況を国民に開示した事であり、もう一つは、当時の中曽根内閣のリーダーシップであった。
組織運営にあたって留意点
一つは、徹底した情報開示である。信義誠実の原理原則にのっとり、その原則を公に示さなければいけない。二つ目は、上に立つ者はその責任を自覚し、それに基づいて行動することである。「責任と権限はペア」でなければならない。
以下は後半で行われた質疑応答の一部である。
Q: 松田会長の考える理想のリーダーとはどのようなものか?
A: 組織のリーダーとして求められる資質のひとつとして、部下の才能を見つけて適所に配置する能力があげられる。他の分野では平凡でも意外な分野で才能を発揮することは、よくあることである。今ひとつ、もっとも重要な資質は、「しんがり」を務めるだけの気概を持つ、つまり権限に応じて生じる責任から逃げないということだ。官であれ民であれ問題のある組織はこれが出来ていない。
Q: 公社という形を維持したまま鉄道を改革することはできたと思われるか?
A: それは無理だったと思う。国鉄では予算決定は国会の議決によることとされており、実質的には大蔵省がその権限を握っていたため、配分の判断基準が硬直的だった。例えばトイレの改善などは、売上との因果関係が曖昧なものだとして、予算がおりなかった。また公務員は基本的に平等であるため評価が減点方式であるが、企業においては個々の才能を発揮させることが必要であり、加点評価でなければいけない。これらの点を考慮すると公社制度のままの改革は事実上不可能であり、実際国鉄も数次にわたる経営改善を試みたが、政治の介入等にも翻弄され、失敗の連続であった。
Q: 組織の意識改革についてお伺いしたい。
A: 意識改革の最善の方法は社員を海外への出張や研修に行かせることだ。今では毎年多くの社員が社外の見聞を広く取り入れて、力を発揮している。