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公共経済政策ワークショップ

2005年1月28日

来年度事例研究について

中島正弘氏(国土交通省官房審議官)
山口勝弘氏(国土交通省航空局航空企画調査室長)
久武昌人氏(経済産業研究所上席研究員)

wsnakajima1 1.概要説明

科目概要:
ミクロ経済政策分野(競争・規制政策/都市地域政策 等)を中心とした事例研究を行う。

事例研究の進め方:
各テーマにつき2班を想定。各班は3-5名程度で構成される。各テーマにつきアドバイスをする担当教員(金本・大橋・松村)と実務者教員(中島審議官・久武上席研究員)を設定。統計解析については、別途、Choi講師がアドバイザーを務める。実務者教員は、テーマに応じて行政府等の担当課に授業を補助する者を設定し、共同して指導を行う。最終回では、学生側が実務者に対して研究成果を発表する場を設定する。wsnakajim2

テーマ:
(A)国土交通省
(1) 中心市街地活性化
(2) 航空市場

(B)経済産業省
(1) 電力市場改革:規制緩和に関連した課題分析
(2) 産業振興政策:交渉中
(メディアコンテンツ/航空宇宙関連 等)

2.実務者側からの説明

(A)国土交通省 

(1)中心市街地活性化:
地方都市の共通の課題となっている中心市街地活性化について、複数の都市の事例調査等を行い、現状の把握、課題の整理、今後の施策の方向性等について研究してもらう。まず、現状と課題を把握するために、これまで蓄積されてきたデータの解説を担当者が学生に対して行う。現場(国土交通省・その他関連省庁)・現地(海外事例も含め)でのインタビューも可能な限り設定する。担当者や政治家への直接インタビューやディスカッションなど、必要に応じてアレンジ。最終的には、学生チームがレポートをまとめる。ちなみに、まちづくり三法の改正がこれまでの課題であった。(中島氏)

(2)航空市場:
航空事例研究では、問題の所在の把握・多様な視点の涵養・政策提案能力の育成を目標とする。テーマ候補の一つ目は、国内空港市場の現状分析と今後の展望。平成12年度に、参入および運賃について規制緩和を行った。それ以後の運賃と需要の変動について、その要因分析を行い、今後の展望を検討した上で、政策提言をまとめてもらう。二点目のテーマ候補は、国際拠点空港の国際比較。国際比較を元に、わが国の国際空港の特徴を整理する。特に、空港整備制度を比較。次に、国際拠点空港のあり方が、今後の東アジア地域の空間経済に及ぼす影響を考察。これらの分析を踏まえ、政策提言をまとめてもらう。航空は、下部構造(管制など)と上部構造(航空会社)の相互連関が深い。この特殊な構造を念頭に入れた政策提言が重要。(山口氏)

(B)経済産業省 (久武氏)

ステークホルダーが多いという点が、経済産業省が担当する分野の特徴。手法としては、定性的な分析が重要になる課題も多い。

電力市場の規制緩和:
新しい電力市場の規制緩和効果を分析。特に、制度設計に関する国際比較を詳細に行う必要がある。

産業振興(メディアコンテンツ・航空宇宙関連など):
現在担当者と検討中。

3.質疑応答

【N:中島氏 T:田村氏 H:久武氏 Y:山口氏 K:金本教授】

Q.授業で提出するレポートと、事例研究でのレポートの違いは?

N:大学の研究者にとっての価値ではなく、実務者にとっての価値が重要になるという点。
T:実現可能性も考慮した政策提言が必要になる。
H:現場は実現可能性が先行することも多いので、より広い立場から政策のプライオリティを考えてもらうことが現場にとっても有益であろう。
K:実務者からの反応はチームでの分析の出来次第ということもある。

Q.政策提言作成にあたって、法案作成までもっていくのか?シンクタンクとの代替(下請け)に陥らないか?

N:下請けとして使うにはこちら側でも不安があるので、そういった形にはならないだろう。また、法律の案文作成には特殊なノウハウが必要であり、それを教えることの意味はないだろう。その前段階の骨子や概要までにとどまるのではないか。
H:本音を引き出すのは、学生の腕の見せ所。忙しい担当者との協力関係は、多少ギブ&テイクで成り立つと考えていたほうがよい。法案作成はOJTで十分。

wsnakajima3Q.この事例研究がどこまでつながるのか?成果次第で、政策提言にもっていけるのか?

N:可能性はある。ただし、あくまで成果次第である。
H:可能性はある。実現可能性の高い案や、冷静なコスト・ベネフィット分析は大いに活用される可能性がある。下請けになってしまうかどうかは、学生の主体性による。
Y:チャレンジングな課題ではあるが、骨のあるレポートを期待している。
K:いずれの分野も現在解決がついていない課題である。政策分析のレベルがまだ十分でない分野である。したがって、政策分析のレベルを高めることで、提案に注目してもらえる可能性は高い。

Q.よい成果を出すためには、データが重要。どれだけデータを共有させていただけるのか?

N:まずは、担当者にレクチャーを受けてもらう。また、現場のデータは役所のものを提供できる。
H:役所の文書はほとんど公開されている。個人的な経験では、公開情報を超えて必要になるデータというのはそれ程ないと考える。
Y:公開されていないが、課題解決に関連するデータというのはありうる。特に、航空会社など民間企業のデータへのアクセスは困難である。適宜アドバイスをしたいと考えている。
K:企業データへのアクセスは役所でも困難。役所のデータ・情報は整理されているため、効率的に情報収集が行えるので、事例研究のパートナーとしては最適。たとえば政治団体や業界団体では役所ほどまとまった資料はでてこない。wsnakajima4

Q.各テーマ2班程度というのは、どういう意図があるのか?

K:競争・比較することが目的ではなく、アプローチに多様性が生まれることを想定している。対象地域で区別する形式などいろいろと考えられる。

Q.どのような形式で授業を行うのか?

K:はじめに、1−2回程度担当者の方からレクチャーをうける。その後のミーティングなどは必要に応じて訪問。大学で中間発表や最終報告を行う。さらに、役所の方でも報告を行う機会を設ける。
N:役所でのミーティングは、参加学生の代表が事前アポイントをとって設定。
Y:各チームの個性に柔軟に対応したい。現場訪問は要望次第で出来る限りアレンジする。
K:航空は航空会社の話を聞きに行くことも重要である。

Q.中心市街地活性化および電力市場改革での具体的な課題は学生が発掘するものか?

中心市街地活性化の課題例:駅前商店街の空洞化・高齢化が生じている。この問題にどう対処するかが課題。国の法制度は一律であるものの、中心市街地の問題は様々である。GISなどで地域特性データを分析して課題に取り組むといったことが考えられる。

電力自由化の課題:非常に複雑なシステムである。日本の市場設計を詳細に各国と比較する必要がある。コストとベネフィットに関する政策分析、細かい制度内容の検証などが中心になるのではないか。

4.テーマの選択について

春休み中にテーマ選択について考えておいてほしい。ショッピング・ウィークを設け、初回の担当課からのレクチャーには複数のテーマに参加できるように時間調整を行いたい。ただし、テーマ間の偏りがあまり大きくならないように学生側で協議しておくことが望ましい。