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公共経済政策ワークショップ

2006年1月23日

『来年度経済分野事例研究について』

中島正弘(国土交通省大臣官房総括審議官)
久武昌人(経済産業研究所上席研究員)
今川拓郎(総務省総合通信基盤局事業政策課市場評価企画官,(兼)公正競争推進室長)
山口勝弘(国際交通政策研究ユニット特任教授,(前)国土交通省航空局航空企画調査室長)
金本良嗣

1. 概要説明

科目概要:
事例研究(ミクロ経済政策)には、2年生を対象とした
 「事例研究(ミクロ経済政策 I・問題分析)」(前期2単位)
 「事例研究(ミクロ経済政策 II・解決策分析)」(後期2単位)
と、1年生を対象とした
 「事例研究(ミクロ経済政策・政策分析入門)」(前期2単位)
がある。いずれもミクロの個別政策分野を中心とした事例研究を、グループによる共同作業として行う。政策分野の例としては、個別の公共事業や規制政策の評価等が想定される。

 前期の「問題分析」では、各政策分野の現状と課題の整理、利害関係者の主張の調査、政策代替案の提示等を行い、後期の「解決策分析」では、本大学院で学んだ分析手法を活用して具体的な政策代替案の分析・評価を行う。

 1年生を対象とした「入門」は、2年生の前期「問題分析」とほぼ同内容であるが、前期だけで一定のまとまりができるよう工夫する。

進め方:
大まかな政策分野として4テーマ程度を設定する。各テーマにつき3名程度の班をいくつか作り、共同作業を行う。

 各テーマについて、アドバイスをする担当教員(金本、大橋、松村のいずれか)と実務者(非常勤)教員(国土交通省中島審議官、経済産業研究所久武上席研究員、今川総務省公正競争推進室長、山口ITPU特任教授)を設定する。実務者教員は、テーマに応じて行政府等の担当部局に授業を補助する者を設定し、共同して指導を行う。

 最終回では、学生が実務者に対して研究成果を発表する場を設ける。

2. 実務者教員からのテーマ案説明

山口氏 —国際交通システム—
 東アジア地域においては経済社会の緊密化の進展に伴い、国内市場と国際市場を峻別している現在の制度的枠組みは限界を迎えると考えられる。本研究ではこの制度的枠組みの見直しに関し各方面へのヒアリングやモデル分析等を行い、具体的な政策提言の立論を行う。具体的な分析事例の候補としては、
 ・東アジアにおける制度的枠組みの見直しが経済厚生に及ぼす影響の分析
 ・東アジアにおける航空企業の分析と政策のあり方
 ・混雑問題(首都圏の空港容量等)の分析と対応策
等を考えている。

中島氏
(1)中心市街地の活性化
 都市計画法の改正案により大規模商業施設の立地規制が強化される。自治体、大手商業流通資本の最適戦略とは?それを勘案した上での改正案の政策評価を行う。
(2)都市の安全性
 市街地の安全度情報は地価や土地利用にどのような影響を与えるか?都市の安全度に関する情報を活用した住民の危険回避行動促進策の可能性の検討とインフラ整備、規制政策等他の政策との比較分析を行う。
(3)有料道路制度
 道路交通の混雑、環境問題等の諸課題への有料道路政策活用の可能性について検討する。
(4)不動産証券化市場
 わが国の不動産証券化市場の現状、これまでの市場整備政策の評価と今後の市場環境、ルール整備の方向を検討する。
(5)建築物構造計算書偽装問題
 わが国の不動産および不動産金融市場に画期的な変革を迫る可能性のある瑕疵保証保険制度やいわゆるノンリコースローンについてその制度化の方向を検討する。
(6) 公共工事の入札契約制度
 公共調達市場の特性は何か?不正を排除し、発注者の利益と建設業の健全な発展をもたらす市場を整備するためにはどのような条件が必要か?

久武氏
具体的テーマについて、現時点での構想としては、電力市場整備関連政策の評価、温暖化対策、省エネ政策の評価等がある。政策部局の対応可能性、院生側の希望等を踏まえ、調整する。
 参考として、今年度の経済産業政策の重点施策を列挙する。
(1)新産業創造戦略を核としたイノベーションの創出
(2)中小企業の活性化と地域経済の再生
(3)アジア経済圏の構築等戦略的な通商政策
の展開 (4)エネルギー環境政策の推進

今川氏 —通信分野の競争政策—
 技術革新の急速な通信市場を対象に、産業組織論・計量経済学や独占禁止法・行政法等、経済学や法学を融合させた学際的アプローチにより、世界最先端のICT国家を主導する競争政策の評価を実施する。具体的内容は以下の通り。
(1)通信市場の基礎知識…歴史的分析、現状把握、事業者視察
(2)競争評価の基礎知識…理論・手法の把握、競争評価事例の研究
(3)競争評価の試行実施…対象決定、データ収集、市場画定、競争状況分析
(4)成果報告…レポート作成、政策担当者への提言、意見交換

3. テーマの選択について

 新学期が始まるまでに、自分が取り組みたいテーマについて考えておくこと。テーマに関して具体的な希望等があれば申し出てほしい。