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東京大学公共政策大学院 | GraSPP / Graduate School of Public Policy | The university of Tokyo

S1S2月曜4限「行政法の現代的諸問題」 2016年05月30日(月)

5月30日の授業でお話しのあった「既存不適格」については、行政法概説Ⅰ18頁を参照してください。建築基準法では、規制事実を尊重して私人に過度な負担を課さない観点から、「既存不適格」を認めていますが、原子力規制委員会による規制については、バックフィット制度を導入したため、「既存不適格」は認められず、既存の施設も新基準への適合を義務付けられることになります。内閣法6条のお話しもありましたが、これについては概説Ⅲ102頁を参照してください。内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基づいて、行政各部を指揮監督するという規定ですが、災害対策基本法28条の6第2項は、緊急対策本部長(原則として内閣総理大臣)に関係行政機関の長に対する指示権を付与しています。この場合には、閣議にかけて決定した方針に基づくことが定められていません。緊急事態においては、緊急対策本部長にかかる指示権を認めることは、内閣法6条に鑑みても許容されるという判断に基づくものです。

6月6日は、公益通報者保護制度について、消費者庁消費者制度課の加納克利課長にお話しいただく予定です。公益通報者保護制度は、食品偽装やリコール隠しが公益通報により発覚したことを教訓として、2004年に制定された公益通報者保護法で導入されたものであり、公益通報を行った労働者を保護するという意味では、労働法制の一環をなす重要な法律ですが、行政法の観点からは、労働者たる公務員の保護という意味で、公務員法と関連するのみならず、以下の2点で行政法独自の意義を有します。第1に、公務員がその所属する国・地方公共団体の違法行為を通報することにより、違法行政が是正されることは、法律による行政を支える法制度であるというとです。第2に、行政監督権限を有する行政庁に外部の労働者から外部通報がなされることは、監督行政庁が違法行為を認知する端緒として重要であることです。たとえば、最近問題になった東芝の不正会計は、東芝の職員から金融庁に対する公益通報で発覚しました。このように、行政庁にとり、公益通報は、行政情報の収集の仕組みとしても重要です。行政法概説Ⅰ163頁を予習しておいください。

宇賀 克也