コーポレートガバナンス改革の再評価と今後の企業経営の課題
【満員御礼】2024年4月8日(月)15:00~17:30
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2014-15年の日本再興戦略を起点として日本企業の「稼ぐ力」を意識して始まった日本のコーポレートガバナンス改革は、これまで企業価値の持続的成長を目指して「攻めのガバナンス」と「守りのガバナンス」の双方の観点から種々の改革が進められてきた。
具体的には、社外取締役の選任の増加とその在り方や取締役会の実効性と機能の検討、指名委員会・報酬酬員会の設置、グループガバナンス、事業再編によるポートフォリオの見直し、エンゲージメント、開示の改善等種々の対応がなされてきた。
一方で、当初の財務価値をベースとした企業価値の持続的成長に加えて、人的資源、知的財産等無形資産への投資やESG, SDGs等をも含めた非財務価値を重視する考え方も加わった。
こうした中にあっても、イノベーションを起こす新領域の開拓、持続的な賃上げなどコーポレートガバナンスを取り巻く残された課題は多い。コーポレートガバナンス改革は、日本の経営の在り方や会社のカタチをどのように変革していくかという課題でもある。
これまでの改革の流れを再評価し、残された課題について議論し、今後の進むべき方向性を探る。
東京大学公共政策大学院(GraSPP) 、武蔵野大学国際総合研究所(MIGA)(共催)
日本CFO協会 (協賛)
無料(要事前申込み。定員に達した場合受付を終了します)
4月5日(金)正午(定員に達した場合は、これより前に締め切ります。)
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令和6年4月8日にZoomウェビナーにおいて、シンポジウム「コーポレートガバナンス改革の再評価と今後の企業経営の課題」が開催されました。本シンポジウムは、寄付研究プロジェクト「経済成長とリスクマネージメント」の中に設けられたコーポレートガバナンス研究会の活動の一環として行われたものです。 当日は、企業経営者・幹部、投資家、監査法人、企業法務研究者をはじめ300名を超える皆様のご参加をいただきました。
まず、武蔵野大学客員教授/東京大学公共政策大学院アドバイザーの林良造先生による開会挨拶の後、本院客員教授の中原裕彦先生が、イントロダクションとして、これまでのコーポレートガバナンス改革を振り返るとともに、幾多の改革を経たのちの日本企業の現状について解説を行いました。(イントロダクション スライド)
その中では、モニタリングボードの役割の一つは、成功体験のイナーシャを断ち切り新しいビジネスモデルに円滑に移行できるようその過程を監督することではないか、企業経営におけるイナーシャ打破のためには機関投資家や社外取締役の機能の活用を強化することが強く求められているのではないか等の論点も提供され、これらはその後のディスカッションにつなげるものとなりました。
開会挨拶 林 良造
イントロダクション 中原 裕彦
パネルディスカッション1
次に、パネルディスカッション1において、2014年以来のコーポレートガバナンス改革の現在までの成果を再評価するとともに、今後の課題についての議論がなされました。議論の中では、改革は道半ばであるが取締役の役割は益々重要となってきていること、改革を契機として会社経営にプリンシパルエージェント理論の考え方が根付き日本人経営者等の意識が変わったこと、取締役会機能がCGコード(第4原則)に明文化されるに至ったこと、社外取締役設置の義務付け等に代表されるように取締役会の監督機能が強化された結果として執行と監督の分離が進んでいること等が評価されていました。
他方、平等主義、エクイティインセンティブの軽視が問題であること、日本においては依然、会社共同体規範が根強いためコーポレートガバナンスの変化を妨げていること等が指摘され、これらを打破するためには、これまでも進めてきた取締役会等の充実、株主との対話、情報開示の強化が、今後とも進めていかなければならない課題であることが強調されていました。
また、取締役会の実効性に係る議論においては、企業経営が順調に行われている時はモニタリング(ボード2.0)だけで完結するが、そうではない時こそプラスアルファ(ボード3.0)の取締役の役割なのではないか、企業価値を上げることができないCEOを交代させる又は自分が取って代わるくらいの社外取締役が揃っていないと企業価値は上がらないのではないか、任意設置である指名報酬委員会を設置している会社も増えていることを踏まえれば機関設計や会社法の柔軟性を見直す時期ではないか等の指摘がありました。加えて、取締役の最大の職務は、コーチングであり、企業価値を高めるマネジメントについての責任の所在を不明確にしないためにも、取締役会がより積極的にコーチングを行う等による関与を強めるべきだとの提案もありました。
リスクテイクを含む攻めの姿勢に係る議論においては、企業が攻めの姿勢に転ずるためには、研究開発費や人件費は費用ではなく投資であるということを認識し、人的資本や付加価値を企業がしっかりと評価すべきであることを取締役が会社経営の場で主張することが重要であること、マネージメント対株主の二層構造が前提となっている会社法をマネージメント、ボード、株主の三層型に変えるための会社法制の変更が重要であること等の意見もありました。また、日本の倒産法制は、倒産させた経営者に対するペナルティが重すぎるので、アメリカのチャプター11のように経営資源を成長産業に集中させるプロセスを提供する形となるよう制度を変えていく必要があるとの意見も出されました。
藤田 純孝(モデレーター)
宍戸 善一
住田 清芽
武井 一浩
中原 裕彦
日戸 興史
パネルディスカッション2
続いて、パネルディスカッション2においては、SDGs、ESGを含めサステナビリティ等の非財務価値や人的資産、知的財産等の無形資産を重視する方向性とエンゲージメントの現状と課題について、活発な議論が行われました。その中で、日本の企業経営においては人的資本や無形資産を活用できていないとの指摘、国際社会を見れば米国では反ESGの動きが広まり、ESGが政治的対立・文化戦争に発展するなど混乱が続くなかで、EUのCSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive)が事実上のグローバルスタンダードになる可能性が示唆されました。さらに、自社の非財務資本が自社の企業価値にもたらす正のインパクトを見える化することの重要性や、比較可能な基準で開示していくことの重要性や、こうした非財務価値に係る取組が経営理念・戦略に基づく「真の経営方針」に合致していることの必要性を強調する発言などがなされました。
また、エンゲージメントに係る議論においては、企業の中長期的な企業価値の向上を目指す「建設的なアクティビスト」の存在、またアクティビストのエンゲージメントが過去1-2年で洗練されてきており、企業の方も聞く耳をもってきているという評価があった一方で、①投資家の体制の問題(投資判断をする部署とESG評価、議決権行使、エンゲージメントを行う部署の分断)、②企業の投資家認識の問題(対話相手の投資家の属性(パッシブかアクティブか)、投資スタイル(バリュー、グロースなど)、担当分野(投資判断、ESG、議決権行使など)等)、③アジェンダ設定の問題(目的が「開示」促進にとどまり、「変化」を後押ししていない)により、企業も投資家もエンゲージメントの先のゴールや成果やインセンティブが見えていないとの指摘もありました。
さらに、経営人材の流動性、多様性に係る議論においては、前提としてあらゆる階層での人材流動性を高める意識改革が必要であり、社歴や性別等に関係ない実効性の高い人的資本戦略を組み立てることの重要性が強調されました。また、政策保有株式比率が多いなど株主構成に多様性がない企業は投資家とのエンゲージメントに積極的ではない傾向になる。多様な株主によるエンゲージメントが長期的な企業価値向上に結びつく、との指摘がなされました。
三瓶 裕喜
チャールズD. レイク II
林 良造
三和 裕美子
殿木 久美子(司会)
コーポレートガバナンスに関わる多岐にわたる分野での第一人者のメンバーの方々による本シンポジウムの議論や指摘が、ご参加の皆様にとりまして今後の企業経営、企業法制等の在り方を深める上でのご参考になれば幸いでございます。
アベノミクスの進展の中で、コーポレートガバナンスコード・スチュワードシップコードの策定などハードロー及びソフトローに於けるルール整備を通じコーポレートガバナンスについての本格的な取り組みが進展した。その結果、社外取締役の選任の増加など相応の成果を上げてきた。こうした中で、我が国上場企業の収益性は相応に上昇傾向にあったものの、所謂攻めのリスクテイクの姿勢は未だ道半ばであるとの指摘がある。コーポレートガバナンスのエコシステム全体として検討すべき課題を考える。
稼ぐ力を取り戻すとの意識で企業価値の持続的成長を目指して始まった2014-15以来のコーポレートガバナンス改革はどこまで進んだか
全体の評価と、残された課題は何かを議論する。
当初の財務価値中心からSDGs, ESGを含めサステナビリティ等の非財務価値や人的資産、知的財産等の無形資産重視が求められている。
これらをどう評価するか。また、エンゲージメントの現状と課題を含めその他の課題を議論する。
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