GraSPP 東京大学公共政策大学院 - Graduate School of Public Policy THE UNIVERSITY OF TOKYO

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エネルギーセキュリティーと環境|株式会社INPEX寄付講座

Research / Research Projects

2025年度研究テーマ 「トランプ政権誕生と世界のエネルギー温暖化政策動向」 第8回 COP30の結果と評価

日 時:12月3日(水) 16時~18時
講演者:有馬 純 東京大学公共政策大学院 客員教授

本研究会では、2025年11月10~21日(22日採択)にブラジル北部ベレンで開催されたCOP30について、開催背景(アマゾン河口の都市で森林保全を象徴)、議長団の体制、主要論点(1.5℃目標、化石燃料、資金、適応、貿易措置)と最終合意「ムティラオ決定(共同作業)」の内容、今後への含意が整理されました。結論として、先進国・途上国対立が固定化する中、合意は成立したものの、脱化石燃料の明示は後退し、資金・適応・貿易対話など途上国側の主張がやや有利に終わったと評価されました。

開催地と運営体制

COP30はルーラ大統領の意向により、アマゾン森林の象徴性を持つベレンで開催。議長のドラーゴ氏と、実務交渉を担うアナ・トニ氏が主導した。一方、ホテル不足・宿泊費高騰などロジ面の混乱が顕在化した。

ブラジルの主要イニシアチブ

⑴国際熱帯林保護基金(TFFF(※1):目標250億ドルを呼び水に1000億ドル動員、先住民等に20%配分)、⑵持続可能燃料需要を2035年までに4倍とする宣言、⑶各国ETS(※2)等の相互接続を目指すカーボン市場統合構想が提示され、一定の賛同を得た。

(※1)TFFF (Tropical Forest Forever Facility):国際熱帯林保護基金
(※2)ETS(Emission Trading System):排出量取引制度

交渉の焦点と「ムティラオ決定」

先進国はNDC(※3)強化やレビュー枠組みを求め、途上国は資金(パリ協定9条)・適応資金の数値目標・CBAM(※4)等の貿易措置を争点化。議題採択の行き詰まりを避けるため、ブラジルは争点4項目を議長直轄協議に回し、最終的に、各国の気候変動対策の実施を加速するための協力的かつ自主的なイニシアチブ「Global Implementation Accelerator(GIA)」の創設、「ベレン・ミッション(1.5℃に向けた実施ギャップ分析)」、Article 9(財政支援)全体に関する議論を整理・深化させるための「気候資金作業計画」、適応資金の3倍増、炭素集約型製品に係る貿易措置に関する国際機関を交えた対話の開始などで決着した。脱化石燃料はUAEコンセンサス(※5)への言及を通じ“間接的”に残るにとどまった。

(※3)Nationally Determined Contribution:自国が決定する貢献
(※4)Carbon Border Adjustment Mechanism:炭素国境調整措置、2021年7月、「欧州グリーン・ディール」の実現に向けた気候変動対策の政策パッケージ「Fit for 55」の一環として、炭素国境調整メカニズム(CBAM)規則案。EU排出量取引制度(EU ETS)に基づいてEU域内で生産される対象製品に課される炭素価格に対応した価格を域外から輸入される対象製品に課す制度。
(※5)UAEコンセンサス:2023年末にアラブ首長国連邦(UAE)で開催されたCOP28(国連気候変動枠組条約第28回締約国会議)で採択された最終合意文書の通称で、化石燃料からの移行(脱却)を初めて明確に要求し、再生可能エネルギーの3倍増などを盛り込み、世界の脱炭素化に向けた「公正で科学的根拠に基づいた」方向性を示した重要な合意

総括と今後の見通し

化石燃料フェーズアウトの明示は困難であり、COPの議論と、COP外のエネルギー業界で強まる「Energy Addition(エネルギー追加)」の見方――新しい再生可能エネルギー源が、既存の化石燃料に単に置き換わるのではなく、AI・データセンター等による需要増も背景に、世界のエネルギー供給全体に「追加」されていくという考え方――との乖離も指摘された。米国不在で先進国の交渉力は低下し、途上国側が相対的に成果を得た一方、GIA等の新プロセスも、今後は資金をめぐる新たな対立の舞台となる様相を呈することが予想される。次回COP31はトルコ・アンタルヤでの開催が予定されており(議長国トルコ、交渉議長オーストラリア)、運営面の改善は見込まれるが、実質面の進展についてはなお不透明である。

有馬 純 東京大学公共政策大学院 客員教授:講演資料「COP30の結果と評価」
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【注】本ページの概要は、有馬 純 東京大学 公共政策大学院 客員教授のご講演内容をもとに筆者が要約したものです。
(文責:東京大学リサーチ・アドミニストレーター 殿木久美子)