公共政策学の分野でいつか留学したいけど、娘がまだ小さいし、私の英語力も全然足りない…そう考えていた私にチャンスを与え、夢を実現させてくれたのはGraSPPです。GraSPPは、ダブルディグリープログラムを提供しており、学内選抜に通れば、世界一流の公共政策大学院に留学して二つ目の修士号を1年で取得するチャンスが得られます 。私は、このプログラムに非常に魅力を感じ、2018年4月に国際公共政策コースに職業人選抜で入学しました。

シンガポールを知るためのオリエンテーションアクティビティ:国会議事堂前にて
学業と仕事と子育ての3つをこなすのはなかなか大変で、家族や職場や学校の理解と助けを得て、何とか乗り切りました。GraSPPには、英語で行われる授業が豊富にあるだけでなく、様々なバックグラウンドを持つ留学生が多数在籍しており、授業や学内のイベントを通して留学生と仲良くなることができます。東京に居ながらにして、ブラジル、インド、ミャンマー、米国、フランス等々、多様な国の留学生と交流できることはGraSPPの魅力のひとつだと思います。私の入学当時のTOEFLの点数は、人前で言うのも憚られるようなものでした。それでも、英語で行われる授業を積極的に履修するとともに、留学生と日々親しく交流したことは、私の英語力向上につながったと思います。TOEFLの点数も何とかギリギリでクリアし、念願のダブルディグリー生として留学する機会を手にすることができました。

Cultural Nightで民俗衣装を着た同級生と
2019年7月からシンガポール国立大学リー・クァンユー公共政策大学院(LKYSPP)での留学を開始しました。当時3歳の娘を連れ、母子二人での初めての海外生活でした。シンガポールは母親が働きながら子育てする環境が整っているうえ、日本人の駐在員も多いため、娘の通う保育園や日本人のベビーシッターサービスなどを見つけることができました。LKYSPPでは、それぞれの授業ごとに必読文献が指定され、プレゼンやリサーチペーパー等の課題も出て、最初はその課題の多さに驚き、苦労しました。その分、日本語では得られなかったような知見や公共政策の分析手法などを学ぶことができ、LKYSPPでは多くのものを得ることができたと思います。また、LKYSPPにはアジアを中心に世界中から留学生が集まっており、学校のイベントやグループワークを通して他の留学生と交流できたことも良い経験となりました。留学を通して、シンガポールをはじめとする東南アジア諸国の政治・経済・文化等についての見識がぐっと広まりました。
シンガポールでは、2020年1月の旧正月明けから次第に新型コロナウィルス感染症の対策が講じられるようになりました。中国本土からの入国制限措置に始まり、3月下旬には大学以外での集まりを10 人以下に制限し、人と人との物理的な距離を 1 メートル以上とするといったより厳格な対策がとられました。LKYSPPの授業も、当初は隔離措置を受けた学生がインターネットを通じて授業に参加する形をとっていましたが、次第に人数の多い授業から全面的なオンライン授業へと切り替わっていき、最後はすべての授業がオンラインとなりました。オンライン授業でも、対面授業と同じように学生は発言を求められますし、グループディスカッションも行われました。それでも、実際に大学院に行って、同級生と挨拶したり、雑談をする機会がなくなってしまったので、楽しみは減ってしまったようにも感じました。その一方で、新型コロナウィルス感染症という同一の問題に対して、日本政府とシンガポール政府の対応の違いについてリアルタイムで知ることができたのは、公共政策や政策決定、説明責任の在り方等を考えるうえで良い経験となりました。両国の文化的・政治的背景は全く異なりますから、一面的にその是非を論じることはできませんが、多角的な視点で物事を考える貴重な機会となりました。

最初のセメスター終了後の記念撮影
最後に、シンガポールへの親子留学は、他の方にも強くお勧めしたいと思います。当初、英語も分からず保育園バスで疲れ切って帰宅していた娘は、1カ月もすると海外生活にも慣れ、次第に英語も中国語も理解して話せるようになり、水泳やバイオリンやバレエを楽しむようになっていました。シンガポールは非常に教育熱心な国で、普通の保育園でも語学教育だけでなく、様々なアクティビティが用意されています。1年弱という留学期間で目を見張るほど成長したのは娘だと思います。また、シンガポールは生活環境が非常に整っており、安全で便利な都市なので、母子2人でも無事に留学を乗り切ることができました。もし、親子留学をお考えの方は私にお声がけいただければ、喜んでご協力させていただきます。