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民事法の基層と現代的課題

担当教官

能見 善久・廣瀬 久和・木庭 顕・西川 洋一・大村 敦志・山本 隆司

科目番号

11010

学期

曜日・時限

月曜3限

単位

科目概要

 既存の法制度を評価し、また新たに法制度を構想する際に必要な、民事法の基本的な考え方および概念を講義する。法学未習者と、学部で民事法を一通り勉強した学生で民事法の全体を広い視野からもう一度理解し直そうとしている者とを、対象にする。

 今年度は「団体と法人」にテーマをしぼり、次の3部構成でオムニバス講義を行う。民事法に限定して考察することができないテーマであり、公法の問題も取り上げることになる。
 1 団体と法人をめぐる現代的課題の概観(能見、山本)
 2 団体と法人をめぐる議論の基層の探求(木庭、西川、大村)
 3 団体と法人に関するいくつかの特定のテーマに関するモノグラフ(廣瀬、ゲストの神作裕之氏、藤谷武史氏)

前提履修科目

なし

成績評価

レポートによる。

テキスト

講義全体に共通の教材は存在しない。

参考文献

下記参照

講義日程

I 団体と法人をめぐる現代的課題の概観
4月12日 能見 
 法的な意味での法人についての基礎的な理解(法人とはなにか?団体と法人とは同じか違うのか?)、
各種法人の分類(社団法人と財団法人、営利法人・中間法人・公益法人など)、法人の社会的な機能、
非営利法人の役割などについて扱う。
 参考資料:特集「団体論・法人論の現代的課題」NBL767所収の各論文

4月19日 休講

4月26日 山本

 団体と法人について、公法の観点から次のような問題を概観する。(1)国を団体として、また法人として捉えることは法的にどのような意味を持つか? (2)国や地方公共団体の周囲に設立された法人には、どのようなものがあり (「国立大学法人」もその一つである)、法人格を分けること、法人を分類することには、法的にどのような意味があるか? (3)国と私的な団体・法人との関係は、法的にどのように分析されるか?
 参考文献:山本「行政組織における法人」塩野宏先生古稀記念論集上巻(2001)−ただし、読むことが必要なわけでも推奨されるわけでもない。 

II 団体と法人をめぐる議論の基層

5月10日・17日 木庭

 まず西ヨーロッパにおいて団体についての原則的な理解となるものがギリシャ・ローマで生まれる背景とその観念の内容・意義について説明される。次いで、そうした素地のうえに団体を(民事)法的に構成するぎりぎりの試みとしてローマ法の組合がその今日的意義とともに)取り上げられ、さらにこの組合がローマ帝政期に変容する様に少し触れられ、この最後の状況から生まれたテクストが中世以来の西ヨーロッパの議論のパラダイムとなることが点描された後、その最後の段階としてのサヴィニーによる法人概念鋳造の厳密な意義と限界がどこにあるかが探られ、これとその法人概念がその後辿る混乱の軌跡との関係が測定される。
参考文献は講義の進行に即して挙げられるが、予め読んであることが前提とされるものはない。

5月24日・31日 西川

 24日 中世ヨーロッパ社会における「団体の意義」
 中世ヨーロッパにおいては、様々な団体は社会の基本的な構成要素であった。中世の社会生活における具体的な例に基づいて、中世の団体の構造、機能、意義について考える。
 31日 近代化と団体性の希求
 急速な上からの近代化を経験した近代ドイツにおいては、それに対抗する社会構想として、様々な文脈から「団体性」が再び希求された。ここでは、そのような構想の体表的なものとして、オットー・フォン・ギールケの社会理論・団体理論を取り上げる。
 参考文献:村上淳一『ドイツ市民法史』(東京大学出版会 1985年)

6月7日・14日 大村

 立法の展開・学説の対応を中心に、フランス法と対比しつつ、日本法における団体論・法人論の特徴について紹介・検討する。
 参考文献:「『結社の自由』の民法学的再検討・序説」NBL767号(2003)

III 団体と法人に関するモノグラフ

6月21日 廣瀬
 団体や法人をめぐる最近の議論では、営利法人としての株式会社と、非営利法人としての公益法人とが話題の中心である。また、外国法制の分析を含め、制度そのものがいわば制度の側から検討される傾向が強く、具体的・個別的な実態との関わりが十分捉えられているとはいえない状況が見られる。そこで私としては、営利と非営利の中間に位置づけられる「協同組合」、中でも中小企業等協同組合法上のそれを取り上げ、これを実態の方から把握することを試みてみようと思う。特に注目するのは、「揖保乃糸」という名前の兵庫県手延べ素麺協同組合である。手延べ素麺業界には株式会社形態のものも多いが、現在一番のシェアを誇るのは、この揖保乃糸という協同組合であり、同組合は明治時代以来、百年以上に亘って存続している。
これを支えてきたのは何か、法制度はどのような役割を担ってきたのか、などの点を考えながら、団体と法人の意味を捉え直してみたい。
 教材は事前に配付予定。

6月28日 神作裕之(東京大学大学院法学政治学研究科教授)

 コーポレート・ガバナンス論の現状と課題ー非営利団体のガバナンス論との比較を視野に入れてー
 現代の経済社会さらには社会一般において大きな影響力をもっている営利法人に関するガバナンス論 の現状と課題を取り上げる。コーポレート・ガバナンス論は、市場のグローバル化に対応する形で世界的に隆盛を極めているが、議論の背景と現状および方向性を検討する。さらに、営利団体と非営利団体の区分の法的意義の理解を前提とし、コーポレート・ガバナンス論と非営利団体のガバナンス論とを比較したい。

  

7月5日 藤谷武史(北海道大学大学院法学研究科助教授)

 非営利法人・団体の課税問題
 この講義は、現在各方面で見直し作業が進められている非営利法人・団体の税制に関する理論的見通しの提示

その他