本演習では、現代日本の自治体行政の現状を中心に据えて、事例を中心に観察を進めることを目的としている。 本年度の提案として、川崎市という特定の自治体を焦点に採りあげ、その自治体における総合的な都市づくりの展開を回顧・追跡することを想定している。具体的には、高度経済成長と大規模な市街地開発の進行から、今日に至るまでの比較的長期のスパンを念頭に、総合計画の変遷や、重要な拠点の開発プロジェクトなどに関して、俯瞰的な研究を行いたい。事例研究の過程では、川崎市の担当の現・元職員の協力を仰ぎながら、本当の素材をもとに調査研究を進めたい。 一般に、自治体職員が、自らが関わってきた都市づくりなどの政策に関して、自ら記録を残すことは必ずしも多くはない。また、組織としての自治体においても、このような実例の記録と記憶の重要性については意識されてきたが、豊富な観察記録が蓄積・整理されているとは、必ずしも言い難い。 そこで、本事例研究では、参加者による対象自治体への現地調査を組み込みながら、参加者全員で事例の観察と蓄積を進めつつ、川崎市の都市づくりの政策を回顧することとしたい。従って、本事例研究は、学外活動としての自治体現地での調査を行うことになる。 具体的には、川崎市に残されている文書資料を調査・分析することから出発するが、同時に、関係者に対するヒアリング調査も行う。ヒアリング調査に関しては、参加者は記録をまとめ、事例研究の場で報告し、「記録報告書(レポート)」を提出することを求める。期末には、これらの資料を踏まえた上で、川崎市の都市づくりの政策に関する分析と考察を行った「分析報告書(レポート)」を提出することを求める。 なお、ヒアリング調査のイメージがわきにくい者は、例えば、以下のものを参照してほしい。 小池和夫『聞きとりの作法』東洋経済新報社、2000年 |