国際行政論

担当教員

城山 英明

配当学期・曜日・時限

冬学期 水曜 2限

内容・進め方・主要文献等

国際行政とは国境を越えた相互依存にともなう諸課題を解決するための様々な組織的マネジメントである。国際関係においても、一定の制度化された実務的世界が存在する。それには国際連合システムを構成する様々な多国間国際組織の活動のみならず、各国による二国間等の調整活動やNGO等の活動も含まれる。国際組織と国、NGOといった組織間関係のマネジメントも1つの焦点である。歴史的には、国際的交流の増大に対応して国際行政は19世紀中葉以降国内行政の展開と共時的に発展してきたが、近年その相互関係には大きな変化の兆しも見える。

国際行政と国内行政とを比較すると2つの差異を指摘することができる。第1に国際行政の対象は多量かつ多様である。対象となるべき人口は60億人近くと巨大であり、各主体の社会的、経済的地位、また言語、通貨、度量衡等の制度も場所により異なる。その結果、多様な対応が求められる。第2に国際行政活動は諸主権国家制という極めて分権的な統治制度の下で行われる。独立した権限の小さい国際組織は国の自律性を尊重しその協力を確保することが求められる。

本講義では以上のような基本的特質を持つ国際行政現象について、組織論、管理論、活動論の観点から行政学的に分析することを試みる。特に、活動論に関しては、安全保障・紛争管理、国際経済規制・援助、国際環境・安全行政の具体的な国際的公共政策過程をとりあげる。これらの政策領域が相互浸透しつつあるのも近年の特質であり、この点にも言及したい。構成案は以下の通りである。

1.国際行政の特質
2.20世紀における国際統治構造の変容
3.国際行政制度の歴史的展開と国際行政論
4.国際行政組織1−国連等一般的国際組織 cf. WTOの横断的機能
5.国際行政組織2−EU等地域組織の実験
6.国際行政の管理1−国際ルール設定と国内実施 cf.国際的基準調和
7.国際行政管理2−国際行政における人事・財政
8.国際行政管理3−実効性・正当性の確保 cf.NGO・企業の利用
9.国際行政活動1−安全保障・紛争管理
10.国際行政活動2−国際援助行政
11.国際行政活動3−技術的専門的国際規制

なお、国際機関の文書、論文、記事等の事例に関する資料を事前に指示あるいは配布し、それらに関する報告も求め、受講者との質疑も行いながら授業を進める予定である。

教材等

渡辺昭夫・土山実男編『グローバル・ガヴァナンス』東京大学出版会、2001年。
田所昌幸・城山英明編著『国際機関の評価と日本』日本経済評論社、2004年。
城山英明『国際行政の構造』東京大学出版会、1997年、他。 

成績評価の方法

筆記試験及びレポート等による。

関連項目