比較法政策1

担当教員

海老原 明夫

配当学期・曜日・時限

冬学期 月曜 3限

内容・進め方・主要文献等

ドイツ連邦共和国の現代法の概略を、憲法・民法を中心に講述する。ドイツ法は日本法にとって歴史的には一つの母法であるから、ドイツ法を知ることは日本法の基礎を知ることにつながるが、類似しているようでありながら、実は根本において日本法とは異なる要素も少なくない。とくにドイツ連邦共和国は、連邦制を採用していること、独自の憲法裁判権を有すること、ヨーロッパ規模での法の統合・発展に組み込まれていることなどから、日本法とは異種の展開を多く見せている。こうしたドイツ法の動態に、翻訳した資料を通じて直接に触れることを通じて、日本法をより良く知り、また相対化するための視座を得させることを目指したい。
授業の構成
講義の前半では、憲法を中心に、ドイツ連邦共和国の統治機構と人権保護のあり方について説明する。すなわち、1.ドイツ連邦共和国とボン基本法の成立、および東西ドイツ統一の経緯について説明した後に、2.統治機構の基本、とくに連邦議会の選挙制度について、これまでの選挙の実際の結果や、選挙制度をめぐる憲法判例を素材にして解説し、次いで3.司法制度を取り上げる。とくに連邦憲法裁判所の機能について時間を割くほか、ドイツの各種の裁判権にみられる参審制を取り上げ、陪審制と比較しながら、参加者との質疑応答・討論を行いたい。また、日本にはないドイツ法の特徴としての4.連邦制について、連邦と州との間で権限の配分調整がどのようになされているかを、立法権限の配分原理や財政調整の仕組みなどを通じて具体的に説明する。  人権については、学説や判例の発展が顕著な幾つかのものを選択的に取り上げ、憲法裁判所の判例を翻訳した資料を多く配布して、ドイツでの盛んな議論と、発展の動向を紹介する。具体的には、5.社会権、とくにその背後にある「社会的法治国家」の観念、6.財産権、7.信教の自由などを予定している。  講義の後半部分は、民法を中心に私法を扱う。最初に、日本法とも多くの共通性をもつ、法律行為制度について若干の説明を行ったのち、ドイツ法に特徴的な9.物権行為の独自性と無因性を取り上げる。講義の最後には、法典制定後の一世紀の間に最も激しい発展を見せた領域としての10.不法行為法、そして近年の憲法判例による変革と立法による改革が顕著にみられる11.家族法について、それぞれ興味深い領域や事例を取り上げることにしたい。

教材等

講義にとって不可欠な資料は、その都度配布する。ボン基本法の条文を援用することが多いので、世界憲法集のような資料を持参すると、講義の理解の助けとなるであろう。また憲法判例を多く取り上げるので、ドイツ憲法判例研究会編『ドイツの最新憲法判例』(信山社)は重要な参考文献である。

成績評価の方法

レポートによる

関連項目