環境政策

担当教員

藤原 正寛・澤 昭裕

配当学期・曜日・時限

夏学期 月曜 2限

内容・進め方・主要文献等

この講義では、我々が直面している環境問題の現実、それが引き起こしている社会問題の経済学からの分析、政府・自治体における環境政策立案過程の解明及びそれらをふまえた環境政策のあり方の概略を述べる。まず、現実の環境問題として公害や廃棄物問題と地球環境問題を取り上げ、循環型社会の必要性や、地球環境問題と経済発展や人口問題の関係を経済学的観点から説明するとともに、特に今年から温室効果ガス削減の約束期間に入る京都議定書に関する政治行政的解説を行う。次に、外部性や公共財などの静学的資源配分問題と、枯渇性資源や再生可能資源などの動学的資源配分問題を、主に効率性の視点から検討する。また現実に生じたさまざまな公害・環境問題に対して採られた政策措置について、理論的解と対比しつつ、その成立過程を辿る。さらに、これらの資源配分問題を解決する方法として、規制、税・補助金、排出権取引、ディポジット制などを解説し、情報の非対称性や国際貿易などがもたらす問題を説明する。特に、最近話題になっている温室効果ガスの排出量取引の実際について触れる。最後に、環境に対する需要の測定法について簡潔に解説を行うとともに、ポスト京都議定書に向けた外交政策的論点を解説する予定である。

授業計画

(暫定案)
T 地球環境問題の諸側面
●第一回目は、経済学から見た環境問題と、<環境政策の概観=地球温暖化問題、リサイクル問題、典型公害に関する政策史と政策担当者の視点>を説明。IPCC報告とスターンレビューなどの重要文書についての概要説明。

U 市場の失敗と環境政策
 1.外部性と公共財、効率と公平のトレードオフ
 2.効率的資源配分、外部性の内部化、コースの定理
●仮説的補償原理や交渉による効率的解決条件の非存在という現実→鉱山閉山と鉱毒賠償問題、東京ぜんそく訴訟、アスベスト対策など公害問題解決の実際についての説明。PPP原則と国家補償(所得再分配)の相克についても触れる。

V 環境政策と政策手段
 3.経済的ピグー型税・補助金政策
 4.政府と規制
5.グリーン税制改革と二重の配当
●京都議定書と国内対策の政策過程。特に環境税に焦点を当て、エネルギー特別会計及び石油石炭税を含む政治経済状況の説明。

 6.B-O税と排出権取引
 7.不確実性と情報
8.私的情報と二点セット政策
●京都メカニズム及び国内キャップアンドトレード型排出権取引についての政策問題を取り扱うとともに、EU-ETSの狙いと効果を解説。また、経団連自主行動計画の位置づけについて考察。

W 環境政策の経済効果
 9.環境政策と国際貿易・地域経済
10.国家間の環境政策格差、カーボンリーケージ
●京都議定書の交渉の歴史と我が国の議定書批准に当たっての政治経済的コンフリクトの説明と、洞爺湖サミットに向けての各国(米、EU、中・印、途上国)の交渉ポジションと交渉ゲームについて。

教材等

C.D.コルスタッド著、『環境経済学入門』、有斐閣。

成績評価の方法

筆記試験による。

関連項目