ヨーロッパ統合と法4

担当教員

伊藤 洋一 網谷 龍介

配当学期・曜日・時限

冬学期  水曜2限

内容・進め方・主要文献等

ヨーロッパ諸国法の「ヨーロッパ法化」現象がとみに指摘されるようになってきている.その原因としてEC法の影響が最も重要であることは言うまでもないが,ヨーロッパ人権条約の影響をも無視することはできない.また,ヨーロッパ人権条約は,組織的には全く別個の存在であるにもかかわらず,ヨーロッパ共同体にとっても重要な意義を持っており,両者の関係は,近年複雑な様相を呈している.したがって,ヨーロッパ人権法の研究は,狭義のヨーロッパ法研究にとっても重要な課題である.
しかし,現在ヨーロッパ人権条約の加盟国数は40カ国を超えている.しかも,EU加盟国でもある西欧諸国のみならず,ロシアをも含む多数の旧東側諸国も加盟国となっている.そのため,比較法研究の必要性および重要性に疑いが無いにも拘わらず,人権条約の国内法への影響に関する実証的研究を行うことは容易ではない.
下記文献は,ヨーロッパ人権条約の加盟国から18カ国を選択した上で,人権条約の国内法への影響を検討した,最近の大規模な共同研究の成果であり,国内機関の範囲を裁判所に限らず,立法・行政にまで広げた点で「法と政治学」の事例研究と見ることも可能である.
本講では,分量的な制約を考慮し,同書から何本かかのナショナル・レポートを選択した上で,それらを手がかりとして,ヨーロッパ人権裁判所と加盟国の国内機関(裁判所,立法,行政等)との相互影響関係を具体的に検討することにより,ヨーロッパ法に対する理解を深めることを目的としている.
具体的には,下記文献から約300頁程度の報告書(序章,イギリス・アイルランド,フランス・ドイツ,ポーランド・スロヴェニア等および終章)を選び,参加者(参加者の人数によっては,グループ)が分担して報告するという形式で進める予定である.使用する教材は英語文献ではあるが,その性質上,国内法に関する基本的な知識が必要であるため,東欧法に関しては,社会科学研究所の小森田教授をゲストとしてお招きする予定である.
なお,教材の性質上,ヨーロッパ法に関する基本的知識を持っていることが,不可欠であるので,予めヨーロッパ法を聴講しておくか,信頼できる概説書を読んでおくこと.
[注意]
初回に配付する教材準備の必要があるので,受講希望者は,2009年9月15日(火)までに,以下の要領で電子メールにより、参加を希望する旨連絡すること.
(1) 伊藤宛(yito@j.u-tokyo.ac.jp)に電子メールで連絡すること
(2)メール標題は「2009年冬学期・ヨーロッパ統合と法参加希望(参加希望者の氏名)」とすること.

教材等

Keller, Hellen & Alec Stone Sweet (ed.), A Europe of Rights: The Impact of the ECHR on National Legal Systems, Oxford, Oxford UP, 2008, xl, 852 p.

成績評価の方法

レポートによる

関連項目