地域政治 A (東欧の政治)

担当教員

篠原 琢

配当学期・曜日・時限

夏学期 金曜 4限

内容・進め方・主要文献等

【授業の目標・概要】

19 世紀から今日までの東欧における「表象の政治」と「記憶の政治」を検討し、東欧の政治がおかれる文化的・歴史的コンテキストを理解する。

【授業計画】

 本講義では、東欧における「表象の政治」と「記憶の政治」を 19 世紀から現在にわたって検討する。主に対象とする地域は、旧ハプスブルク帝国の領域、および旧ポーランド王国の領域である。
  この地域は、 19 世紀後半、ナショナリズムの発展にともなってそれ以前には知られなかった「国民」という境界による社会的分断を経験することになった。近世から 20 世紀の両次世界大戦期まで、この地域は、多言語的であり、多宗派的であることが常態であったが、国民という境界は、 19 世紀後半より徐々に公的生活のなかで、壁として経験されるようになる。反ユダヤ主義も、特異な性質を持ちながら、この新しい分断の重要な一部分であった。 20 世紀の二つの世界戦争は、この分断を権力と暴力とをもって日常生活のなかに貫入させた。第二次世界大戦の結果、この地域で数百年にわたって有機的に形成されてきた住民構成は、数年のうちに破壊されることになった。こうして東欧は、即物的な意味で、「歴史の断絶」を経ることになったのである。
 授業はおよそ三部から構成される。第一部は、 19 世紀のナショナリズムの発展過程を「表象の政治」の展開として分析し、それによる社会的分断の意味を考えることにあてられる。第二部は、第一次世界大戦と東欧の擬似的国民国家の成立から第二次世界大戦という破局までを扱い、ハンナ・アーレントの議論を補助線としながら、少数者、強制追放、難民、ジェノサイドの問題を考える。第三部は、冷戦終結から過去 20 年を主な対象に、多文化社会の分断、第二次世界大戦をめぐる「記憶の政治」がどのように展開されたのか、分析し、記憶の抗争、和解の試みという歴史と現実政治との交差点において、東欧社会を位置づけてみたい。

 

 

教材等

授業時に指示する。

成績評価の方法

試験による。

関連項目