地域政治C(現代フランスの政治)

担当教員

中山 洋平

単位数 / 使用言語 / 配当学期

2単位 / 日本語 / 冬学期

授業の目標・概要

既に民主制が定着した国として看過されがちな20世紀のフランスは、実は、比較政治学的な省察を刺激する変動のダイナミズムに満ちている。第二次大戦後のフランス政治は、強力な国家官僚制が社会を上から統御・指導する独特のスタイルで知られてきたが、90年代以降、ヨーロッパ統合やグローバル化の進展に伴い、根本的な変容を経験した。EUレベルへの権限の移転と経済の市場化が平行して急速に進む中、官僚制の影響力は見る影もなく衰えた。80年代の分権化改革で自由になった地方自治体は、多元化するEUのガヴァナンスの中で、国民国家の枠組みを相対化しつつあるとさえ言われる。しかし20世紀を振り返れば、フランス政治はこれに比肩する規模の構造変動を既に経験している。農村を中心とした個人主義的な社会の上にリベラルな議会共和制が載っていた戦間期までの政治のあり方と、急速な都市化と重工業化で一変した社会を国家官僚制が牽引しようとした第五共和制初期(1960年代)のフランス政治とを比べれば、多くの点で全く対照的である。強力な大統領制を定めた第五共和制憲法への移行はその一側面でしかない。この講義では、20世紀のフランスが経験した、この2つの大きな構造変動の原因と帰結とを祖述するのを眼目とする。

授業のキーワード

フランス,政治,比較政治

授業計画

講義の前半では、第三・第四共和制の議会中心の統治体制の構造を他国の事例との比較の下に描き出した上で、第五共和制への転換の過程を主に分析する。講義の後半では、80年代以降、現代に至るまでの政党制、政官関係、経済運営システム、中央地方関係など、全般にわたる構造変動を跡付ける。

授業の方法

通常の講義形式
学部および総合法政専攻修士課程と合併

成績評価方法

筆記試験による

教科書

教科書は用いない

参考書

参考文献は随時提示するが、大山礼子『フランスの政治制度』(東信堂、2006年)と、渡辺和行・南充彦・森本哲郎『現代フランス政治史』(ナカニシヤ出版、1997年)には一度目を通しておくことが望ましい。

履修上の注意

同時に開講される「比較政治3(先進国の政治)」とは内容上、密接に関連し、相互に参照されるが、その聴講を前提とはしない。

関連項目

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