金融機能と金融規制

担当教員

天谷 知子

単位数 / 使用言語 / 配当学期

2単位 / 日本語 / 冬学期

授業の目標・概要

本講義では、金融機能の在り方との関わりに重点を置きつつ、金融規制にかかる事項について幅広くとりあげる。(ただし、授業計画にある通り、金融規制のうち主に「プルーデンシャル規制(信用秩序維持、金融システム安定確保)」と呼ばれる分野を取り上げ、他の分野については概略を簡単に触れるのみとなる予定である。)
第1部では、金融規制の目的と必要性についての複数の見解を紹介する。金融機能の提供のされ方が変化するなか、金融規制の目的・必要性の議論は、単なる理論構成の問題ではなく、規制範囲・規制手法にかかる議論に直ちに関わることが多い。したがって、各論者が前提としている「規制の目的・必要性」を想定しつつ金融規制にかかる議論を正しく理解するための基礎を身につけることを目的とする。
第2部では、伝統的な金融規制の基本構造について説明する。近年の金融技術の発達等からみると「古典的すぎる」と思える内容もあるかもしれない。しかし、①今日においてもなお金融機能の相当部分は伝統的な方法で提供されているとともに、②伝統的な規制構造を理解してはじめて、現在直面している課題の何が「新しい」のかを理解できる。1970年代の金融自由化以降今日に至るまで構築されてきた金融規制の基本構造の概略を理解することを目的とする。
第3部では、金融の変化とそれが金融規制に与える影響について、主として1990年代以降の金融技術の発展から「リーマンショック」後の国際金融危機を踏まえた動きまでを対象に説明する。新たな金融技術の発展等の変化とそれに対する金融規制上の対応の本質的な意義を、第1部、第2部での理解の上にたち理解することを目的とする。
全体を通じ、多くの「前提」の上に成り立つ理論や、特定の事象に着目した(時には「感情的」な)狭い議論に振り回されるのではなく、これらを消化した上で、深度ある議論を行うための基礎を身につけることを目指す。

授業のキーワード

金融規制,銀行,証券化,監督,行政,金融システム

授業計画

第1部 金融規制の目的と必要性
 第1章 金融の機能
 第2章 金融規制の目的と必要性
 第3章 市場の合理性と金融規制

第2部 金融規制の基本構造 
第1章 プルーデンシャル規制の基本の代名詞 CAMELS
 第1節 CAMELS とは
 第2節 各論
   第1項 資産(asset)
   第2項 市場変動(sensitivity)
   第3項 ビジネスモデル(earnings)
   第4項 流動性( liquidity) と 資本(capital)
   第5項 経営(management)
 第3節 自己資本比率規制
 第4節 ディスクロージャー - 「市場規律」と「透明性」
第2章 預金保険制度と破綻処理
第3章 被規制金融機関と規制監督当局の行動にかかるキーワード
 第1節 被規制金融機関の行動-regulatory arbitrage
 第2節 規制監督当局の行動-regulatory forbearanceとregulatory capture
第4章  その他の金融規制・制度、規制監督当局
 
第3部 金融の変化と金融規制
第1章 金融技術の高度化、金融商品の複雑化
 第1節 金融のアンバンドリング
 第2節 デリバティブの発達
 第3節 金融工学の活用 VaRによるリスク測定
 第4節 証券化のさらなる発達
第2章 金融の国際化と金融規制
 第1節 国際的に活動する金融機関と金融システム
 第2節 市場間競争
第3章 シャドーバンキング
 第1節 欧米市場における金融仲介機能の担い手の広がり
 第2節 シャドーバンキングの機能不全の影響と規制にかかる議論
第3章 マクロプルーデンス
 第1節 金融システムの視点
 第2節 実体経済の視点

* 各授業においては、我が国及び諸外国における実例をとりこみながら行う。

授業の方法

講義

成績評価方法

平常点及び筆記試験による

教科書

開講時に指示する

履修上の注意

「金融論」「ファイナンス」等の科目が既習であることを条件とするものではなく、必要に応じこれらの基礎的事項についても授業において説明する。但し、これら分野についての基礎知識のない者は、並行して概説書・入門書を読むことを勧める。

関連項目

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