ヨーロッパ統合と法2

担当教員

伊藤 洋一 / 網谷 龍介

単位数 / 使用言語 / 配当学期

2単位 / 日本語 / 冬学期

授業の目標・概要

EU法は,1970年代から法の支配,基本権保障,民主化等,強い「憲法化」傾向を示すようになってきており,多元的民主主義の価値観を共有する「価値観共同体(Weltgemeinschaft)」という表現も近時使われるようになってきている.このような現象は,EUが,経済の論理のみを追求する国際組織ではないことを示そうとしている点で,人権・法の支配といった言葉に強く反発しているアジア諸国の経済統合論と極めて対照的である.
しかし,EUも,EECの発足当初から,現在のように「憲法化」していたわけではない.現在から振り返れば,EUの「憲法化」は,EC法の国内法に対する絶対的優越を巡る,EC裁判所と国内裁判所との間の激しい応酬から生じてきたと見ることができるように思われる.そのような激しい応酬の当事者として最も有名なのは,ドイツ連邦憲法裁判所である.
今年度は,第二次大戦後から1970年代末までのドイツ連邦憲法裁判所とEC裁判所との対決を,歴史的に分析する文献を講読する.著者は,実定法学者ではなく,ヨーロッパ統合史研究者である.このような研究は,ヨーロッパ法に関する「法と政治学」の事例研究として,またEC裁判所と国内裁判所の応酬によるダイナミックな法形成過程を分析したものとして,法学研究者にとっても興味深いのみならず,ヨーロッパにおける国内法の枠を超えた法形成・運用の実際を見る際の視野を広げ,ヨーロッパ法の理解を深める点でも有益と思われるからである.

授業のキーワード

EU法,ドイツ連邦憲法裁判所,EU裁判所,ヨーロッパ法,ヨーロッパ人権法

EU Law, German Federal Constitutional Court, European Court of Justice, European Law, European Human Rights Law

授業計画

第1回 イントロダクション:授業の趣旨説明,ヨーロッパ法研究に関する調査方法・文献案内,報告者の分担決定を行う.
第2回 参加者による報告開始.
なお,第3回以降については,本授業の性質上,現時点では各回毎の内容記述をすることはできない.参加者の報告による演習形式をとる以上,参加者の人数,語学力等に応じ,担当部分の割り振りを考慮する必要があるのみならず,文献を正確に読み,内容を批判的に検討・報告すること自体が,授業の目的だからである.

授業の方法

下記文献所収の論文を,参加者(参加者の人数によっては,グループ)が分担報告し,議論する形式で進める予定である.

成績評価方法

授業における報告およびレポートによる.
筆記試験を行わない
平常点を考慮する
成績をA+・A・B・C+・C-(2011年度以前の入学者はC)・Fで評価する

教科書

Davies, Bill, Resisting the European Court of Justice: West Germany’s Confrontation with European Law, 1949-1979, Cambridge, Cambridge UP, 2012.

履修上の注意

使用する教材は英語文献ではあるが,その性質上,国内法に関する基本的な知識が必要かつ有益である.また,教材の性質上,EU法・ヨーロッパ人権法に関する基本的知識が不可欠であるので,予めヨーロッパ法を聴講しておくか,信頼できる概説書を読んでおくことが望ましい.

[受講希望者に対する注意事項]
初回に配付する教材準備の必要があるので,受講希望者は,2014年9月5日(金)までに,以下の要領で電子メールにより,参加を希望する旨連絡すること.また,初回開講時に報告者の決定を行う必要があり,事前の受講希望連絡の無い希望者については,参加を認めがたいので,この点注意すること.
(1) 伊藤宛(yito@j.u-tokyo.ac.jp)に電子メールで連絡すること
(2)メール標題は「2014年冬学期・ヨーロッパ統合と法参加希望(参加希望者の氏名・所属)」とすること.
(3) メール本文には,連絡先電話番号をも記載すること.

その他留意事項

毎年開講

関連項目

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