ミクロ経済学基礎
Principles of Microeconomics

担当教員 / Instructors

八田 達夫

配当学期 / 使用言語 / 単位数 / Term / Language / Credits

S1 / 日本語 / 2

授業の目標・概要 / Objectives

授業の目的
 本講義は、経済学の観点から、国民の生活水準向上のために市場と政府が果たすべき役割を明らかにします。現代日本経済の政策問題を題材に取り入れながら論じることが特徴です。
 政府には、①市場の失敗への対策と、②格差是正とに関して果たすべき役割があることを、ミクロ経済学は明らかにします。したがって政府は、この役割に基づいて、市場の機能を規制したり補完したりすべきです。それが経済政策です。
 しかし、そのような根拠がないのに、政府に市場の機能を押さえつけさせようとする政治的な力が、どこの国にも存在します。既得権者による参入規制はその代表例です。
 特に、知識人の間で経済学的な考え方が浸透していない日本では、至るところで既得権がうごめき、数多くの参入規制がうまれ、放置されてきました。このため、成長産業に資源が移動しなくなり、成長が止まっています。また、既得権集団による労働市場における新規参入の抑制も放置されてきたため、格差が拡大しています。しかし見方を変えると、日本は、経済学の視点を政策採否の判断基準にすることによって、生活水準を大幅に改善する余地がきわめて大きい国です。
 本講義が、受講生にとって、経済学のおもしろさを発見するきっかけになればと願っています。

授業の概要
 まず、市場と政府の役割分担の骨組みを学びます。次に、市場のメカニズムや、社会的余剰の概念等のミクロ経済学の基本事項を学習します。その上で、課税と補助金、公共財、外部不経済、社会保障政策の根拠としての情報の非対称性について学びます。最後に、効率化と格差是正の両立等に係わる一般的な政策問題を考察し、①少子化、②格差、③東京一極集中、④エネルギー政策、⑤成長戦略といった現在の日本の政策課題を、ミクロ経済学を踏まえて討論します。

授業のキーワード / Keywords

経済学,経済政策,市場,政府,余剰分析,需要,供給,規制,外部経済,外部不経済,独占,公共財,労働市場,情報の非対称性,社会保険,社会保障,再分配,社会的厚生,効率化,格差,政治,官僚,メディア,経済成長,少子化,東京一極集中,エネルギー政策,成長戦略

授業計画 / Schedule

4月6日[問題提起]
1. 市場と政府の役割分担、経済の全体像(教科書: 序章,1章)
2. 需要と供給、供給曲線の導出(教科書: 2章,3章)

4月20日[余剰分析]
3. 生産者余剰、可変費用、利潤(教科書: 4章)
4. 需要曲線の導出、総余剰、参入規制(教科書: 5章,6章)
5. 市場介入(教科書: 7章)

4月27日[市場の失敗対策]
6. 外部不経済(教科書: 8章)
7. 規模の経済・独占(教科書: 9章)
8. 外部経済と公共財、道路の規模・料金・財源(教科書: 10章,11章)

5月11日[格差是正と社会保障]
9. 労働市場(教科書: 12章)
10. 社会保険(参考書①: 9章)
11. 再分配政策(参考書②: 22章)

5月18日[効率化と格差是正の両立]
12. 社会的厚生(教科書: 13章)
13. 効率化原則(教科書: 14章)

5月25日[現在日本の政策課題]
14. 政治家と官僚とメディアの役割分担(教科書: 終章)
15. 少子化、格差、東京一極集中、エネルギー政策、成長戦略(配布資料)

6月1日(最終回)
期末考査

授業の方法 / Teaching Methods

講義形式

成績評価方法 / Grading

期末考査、および数回の抜き打ちでのクイズによって行う。

教科書 / Required Textbook

八田達夫『ミクロ経済学 Expressway』 東洋経済新報社,2013年

参考書 / Reference Books

① 八田達夫『ミクロ経済学Ⅰ 市場の失敗と政府の失敗への対策』東洋経済新報社,2008年
② 八田達夫『ミクロ経済学Ⅱ 効率化と格差是正』東洋経済新報社,2009年
③ 常木淳『法律家をめざす人のための経済学』岩波書店,2015年

履修上の注意 / Notes on Taking the Course

1回の授業で扱う分量が多いので、必ず予習をしてください。

関連項目 / Related Resources