ヨーロッパ法
European Law

担当教員 / Instructors

伊藤 洋一

配当学期 / 使用言語 / 単位数 / Term / Language / Credits

S1S2 / 日本語 / 2

授業の目標・概要 / Objectives

東西冷戦の終結とともに,ヨーロッパ連合は,安全保障をも視野にいれた広い権限を持つ地域的国際組織として,今や国際経済のみならず国際政治においても大きな意義を持つ存在となった.
また,ヨーロッパ統合の進展とともに,ヨーロッパ共同体法の重要性は,近年増加の一途をたどっており,特に,EC/EU法の基礎的知識は,EU加盟国の国内法理解に際しても今や不可欠となっている.ヨーロッパ法が,いかにして国内法においても重要性を獲得するようになったきたのかは,国際レベルにおける法の支配の確立事例としても極めて興味深い問題である.
他方で,EUに対する政治的反発・批判が,近時のユーロ危機,移民問題等を巡り噴出しており,「ブリュッセル」が諸悪の根源であるかのような主張がしばしばなされ,昨年の欧州議会選挙では極右反ヨーロッパ政党の躍進が大々的に報じられた.また,ギリシャのユーロ圏離脱(Grexit)の懸念,更に2012年からはイギリスのEU脱退(Brexit)が現実味を帯びてきている.
日本のマスコミ報道でも,近時EUに関する報道は少なくないが,残念ながら,日本のジャーナリストをも含め,現実のEUにおける制度設計,法形成がどのようになされ,またどのように運用されているかにつき,正確な理解を持つ者は多くないのが現状である.
しかし,なぜEUが常に「非民主的」だと非難され,「ブリュッセル」だけが諸悪の根源だとされるのか,そのような非難は本当に正しいのか,正しいとした場合,誰もが「民主的」だと認めるような制度は,どのようにすれば形成できるのか.それほどまでに「非民主的」な組織であるにも拘らず,なぜ加盟国は,EUを直ち廃止しないのか.単に,不満の矛先をEUに向けるだけで,ヨーロッパの全ての問題が解決できるのか,といった疑問が次々に浮ぶであろう.
一言で言えば,グローバル化の進展過程において,古典的な主権国家の枠を超える「民主的」な国際組織をどのように設計すべきかという大きな問題としても,EUの制度・運用の研究は重要な意義を持つのである.
以上のように,EC/EU法は,従来の古典的国際法とどのように異なるのか,加盟国の国内法との間にどのような影響関係があるのか,「民主的」な国際組織の設計はどのようなものであるべきかといった問題は,学問的にも重要な理論的問題を提起している.

本講では,上述のような近時の問題状況をも念頭に置きつつ,現行法たるリスボン条約を中心に講義を行う予定である.EU法の対象分野は,共同体管轄事項が拡張されてきた結果,今や多岐にわたっているが,EU組織法の理解は,個別のEU実体法理解のため不可欠の前提となる.本講では,EU法の総論部分にあたる組織法,具体的には,EUの機構,法源,争訟制度等について順次講じる予定である.

授業のキーワード / Keywords

ヨーロッパ法,EU法,ヨーロッパ連合,EC法,ヨーロッパ統合

EU Law, European Law, European Union, European Integration

授業計画 / Schedule

第1回 イントロダクション: ヨーロッパ法研究の意義と方法
第2回 ヨーロッパ統合の歴史
第3回 ECとEU,共同市場と法
第4回 EUの機関
第5回 EUと加盟国の権限配分
第6回 EUにおける決定過程
第7回 EUの法源(1)
第8回 EUの法源(2)
第9回 EU法の直接適用性(1)
第10回 EU法の直接適用性(2)
第11回 EU法の優越(1)
第12回 EU法の優越(2)
第13回 EU争訟法の概要

授業の方法 / Teaching Methods

講義

成績評価方法 / Grading

筆記試験による

教科書 / Required Textbook

教科書無し.条約集(英文)等については開講後に随時指示.

その他留意事項 / Miscellaneous Information

来年度も開講予定

関連項目 / Related Resources