留学生だより

塚越由郁(LKY-SPP)

シンガポールに来て早くも3ヶ月が過ぎようとしています。来た当初は右も左も分からず、また毎日が真夏の生活に戸惑いましたが、3ヶ月経った今「帰りたくない」と早くも毎日思っています。この体験記が来年LKYを訪れたいと思っている方々に少しでもお役に立てれば幸いです。

以前から留学を考えていた私に、GraSPPの先生がおっしゃった「英語を勉強したい、研究を深めたい、そんなことはここにいてもいくらでもできる。大切なことは、留学先でしか得られない機会を逃さないこと」という一言が、私の留学生活に決定的な影響を与えて下さいました。

私は、この言葉を胸に成田からシンガポールに飛び立ちました。幸い、GraSPPからの交換留学生という立場は、いい意味でも困難な意味でも、多くの機会を与えてくれました。まずいい意味では、先生方のお力のおかげで学内に留まらず、在シンガポール日本大使館や財務省の方々にお会いできたことです。LKYの授業を通して疑問に思っていたことを質問するなど、シンガポールにおいて日本の政策に関与していらっしゃる方のお話を聞けることは、とても貴重な経験となりました。さらに、シンガポール国立大学院の日本語研究科の学会に参加する機会にも恵まれました。私はここで、日米同盟について発表しました。当日は、東南アジア諸国はもとより、ヨーロッパやアメリカからも日本研究を行っている学生や教授が訪れており、学会終了後も遅くまで議論を重ね、参加者の日本への関心の高さを身にしみて感じました。

困難な点(同時に刺激的な経験でもあるのですが)は、常に「日本はどうなのか、GraSPPはどうなのか」という質問をLKYの教授や学生からされることです。私はここで、国際安全保障の授業を履修していますが、日米同盟や歴史問題などのテーマが頻繁に取り入れられ、常に日本人としての自分の意見を求められます。授業内では収まらず、その後2時間以上も日本の侵略についてシンガポール出身の友人と話したこともありました。また、日本との苦しい体験を私に話しながらも、「それでも今は日本との新しい関係に向けて進んでいきたい。憎しみはまた戦争を生むだけだから」と話して下さった方もいらっしゃいました。歴史的な問題に対して、必要以上に卑屈になる必要はないと私は考えています。一方で、人の考え方や価値観はすぐには変わらないのだということも彼らとの話を通して痛感しています。そして客観的に物事を見ることの大切さを認識するとともに、問題を解決するためにはそれだけでは不十分なのではないかとも感じ始めています。

アジア諸国を始め、世界各国から学生が集まるLKYでは様々な出会いがあり、その出会いからまた新しい価値観を垣間見ることができます。このような機会を与えて下さったGraSPP、LKYの皆様に感謝しながら残りの期間を一層充実させたいと思っています。

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