第43回公共政策セミナー

世界的課題に立ち向かう日本とメキシコ

パネリスト:
Lisa Antillon Kantrowitz 氏(環境研究家、メディアコメンテーター)
西村 六善 氏(内閣特別顧問、元駐墨大使)
Laura Rubio Diaz Leal 氏(ITAM教授)
Carlos Uscanga 氏(メキシコ国立自治大学教授)
林 良造 氏(東京大学公共政策大学院教授)
Monica Serrano 氏(メキシコ大学院大学教授)
田中 明彦 氏(東京大学大学院情報学環・東洋文化研究所教授、東京財団上席研究員)
Jorge Montano 氏(元駐米大使、元国連大使)
北岡 伸一 氏(東京大学大学院教授、前国連大使、東京財団主任研究員)
恒川 惠市 氏(JICA研究所所長)

日 時 :11月21日(金) 10時30分〜14050分
場 所 :東京大学本郷キャンパス 小柴ホール
共 催 :東京財団、メキシコ大使館、ITAM
(日墨修好通商航海条約締結120周年記念シンポジウム)

プログラム

1. 環境 10:45-11:45

スピーカー:
Lisa Antillon Kantrowitz 氏(環境研究家、メディアコメンテータ)
西村 六善 氏(内閣特別顧問、元駐墨大使)

環境問題研究家のリサ氏より、メキシコが取り組んでいる環境問題について述べ、 現在京都議定書上の削減義務を負わない途上国も、 その能力に見合った貢献を行うべきである、そして、 京都議定書をより強力にサポートするために、 気候変動に関する世界基金(グリーンファンド)が重要である旨述べた。

次に、西村六善内閣特別顧問が、メキシコ側パネリストの提案を踏まえ、 メキシコが削減義務を負うことや資金支援提案は、世界的なインパクトを与え、 今後の議論に有益な一石となるであろう、両国は、 地球温暖化防止の国際協力で最良のパートナーに成りうると述べた。

2. 日墨関係 13:35-14:35

スピーカー:
Laura Rubio Diaz Leal 氏(ITAM教授)
Carlos Uscanga 氏(メキシコ国立自治大学教授)
林 良造 氏(東京大学公共政策大学院教授)

ラウラITAM教授より、1888年日墨国交樹立以降、日墨関係は、 経済的な関係のみであったが、ここ10年においては政治的な理解も深まり、 国連改革・安全保障等で協力を行い、 更に協議メカニズムを強固にしていかなければならないとの発言があり、 カルロスUNAM教授からは、過去20年の日墨経済関係を振り返り、 その中で様々な経済・政治環境から、 日墨合同プロジェクトが頓挫する等よくない経験もあったが、現在は、 更に対外投資を惹きつけようとしているので、 日本との間でパートナーシップを強化できればと述べた。

林教授が、最後に、経済産業省での経験及びEPA(経済連携協定)締結の成果を披露した上で、 メキシコは若い人口動態、資源国であること等日本とは補完的な関係にあり、 国際枠組みの主要国として、 両国が密接な意見交換を通じて共通の認識を形成していくことの意義は大きいと述べた。

3. 安全保障 14:40-15:40

スピーカー:
Monica Serrano 氏(メキシコ大学院大学教授)
田中 明彦 氏(東京大学大学院情報学環・東洋文化研究所教授、東京財団上席研究員)

モニカ教授は、9.11テロ以降、カナダやメキシコの領土が、 米国攻撃の過激派やテロを開始するプラットホームとして使われることが懸念されているが、 国境取締は必須条件ではあるものの、 NAFTAがこれらの国の相互理解の基盤となるものであり、 これなどを踏まえた上で共に課題に立ち向かうことこそが必要であると示唆した。 テロに対する欧州の経験は、全ての脅威をなくすということではなく、 それを管理することであると述べた。

田中教授は、日本をとりまく安全保障環境について述べた後、安全保障戦略は、 多層的かつ協調的に組み合わせたものでなければならず [1]日本自身の多機能弾力的防衛力の整備とその統合的・実務的運用、 [2]日米同盟の信頼性・実効性強化、[3]地域安全保障協力の促進、 [4]国際平和協力の強化が重要であることを述べた。

4. アメリカ合衆国に対するメキシコと日本 15:45-16:45

スピーカー:
Jorge Montano 氏(元駐米大使、元国連大使)
北岡 伸一 氏(東京大学大学院教授、前国連大使、東京財団主任研究員)

フリアン次席大使より、これまでの議論を踏まえ、[1]景気刺激策、 規制強化等のグローバルな問題においての優先課題や気候変動、 エネルギー・食糧も含む広範囲の安全保障においても米国新政権と関係を構築していきたい、 [2]来年1月の米国新政権発足とともに、日墨は、 国連安保理において非常任理事国となり、 新政権の第一歩から国連の枠組みの中でいくことができ、 今後米国の関与の在り方について見極めることを留保しつつ、 見通しは良好とみている、[3]日本とは、地政学的にも異なるが、 ファンダメンタルズ、共通項を通して、 日墨は新しい新政権と関与することができる旨述べた。

北岡教授は、戦前・戦後の日本とメキシコの対米国の歴史に触れた後、 1月からの日墨が非常任理事国となることを踏まえ、非常任理事国内の人口、 国力(上位2番は日墨)を勘案しても、単極から多極化の流れの中でも、 大国である米国とも、途上国の集まりとも近く、 同じアプローチをしていく国として連携し、調整していくことが、 日墨の重要な役割と考えると締めくくった。

関連項目