在学生用掲示板

2006-04-26

【授業】火曜4限「政策決定・行政統制論」を受講されている皆さんへ

 昨日のゲストスピーカーの黒澤氏が、質疑応答に若干の補足をされたものを送付してくれましたので、皆さんにお伝えします。
                                          宇賀克也

 4月25日 質疑応答のまとめ

Q 住民でも地権者の存在は特別だと思うがいかがだったか。
A 参加住民には地権者もいた。この地権者もいろんな立場の人がいた。
未整備区間の土地を持つ一部の地権者は、取り組みがかなり進んだ段階で参加し始め、「売却の意思はない」と表明された。最終的には、将来、開発意欲が高まった段階でそれにあわせて計画を確定する手法が考えられるとして、この区間を外して都市計画決定している。
 一方、土地区画整理事業に参加し、道路整備を認知していた地権者は、基盤整備ありきで土地区画整理事業に参加したという背景から早期整備を求めていた(この区間については都市計画決定している)。 よって計画決定には相当の影響があったと言える。

Q 住民の範囲はどのように設定したのか。
A 来るものは拒まずという姿勢で進めてきた。ただし、全市的には市広報やホームページ、区単位では区の広報、沿道に当たる地区では町内会単位にも情報を流すといった具合に、この構想道路に近づくほど、広報媒体の密度が濃くなってくる。 (住民の範囲を巡っては、庁内でも激しい議論があった。また、住民間でも小競り合いになったこともあるが、市外の人も受け入れることとした。)

Q 提示された案に関しては予算化が伴うはずだが、その辺はどのように議論されたのか。
A 単に意見を求めると、コストを無視した意見が出てくる。コスト感覚を議論に入
れるために代表的な案に整備費の概算を入れ、事業費の側面からも議論できるように した。

Q PIのやり方として一般化しているのか。
A 取り組みで得られたノウハウのパーツは活かされていると思う。骨格基盤と地区施設では住民の関わり方も異なるだろうが、骨格基盤である高速道路の計画周知に関しては、市が事業者を指導調整する立場にあるため、この取り組みで得られたパンフレットの作成技術などが住民周知に応用される。

Q 住民参加を条例化・制度化する動きは。
A 住民の意向を踏まえた条例や制度は制定しやすくなった。地下室マンションの規制もその例と言える。

Q 複数案をどうやって絞り込んだのか。
A 代替案は意見交換会で住民に直接図上に描いてもらった。その中で、計画検討にふさわしい案を絞り込んだ。たとえば、川を斜めに渡る案や不自然な線形の案は安全性などの問題で削除できる。道路線形案の背景にある事由を整理しながら「住民参加の道路づくり委員会」で当初の半分に絞り込んだ。

Q 議会にはどのように対処したか。
A 全会派ともこの取り組みには理解を示していた。意見交換会に出席する議員もいたが、あくまで静観を貫いていた。 なお、どの会派も状況報告は求めていたので、報告だけは怠らないようにした。

Q 住民にも意識改革を求めるような記述があったが。
A 最終的には行政が責任を取るにせよ、ある意思決定により住民自身が不便や不利益を蒙る事態もありうる。そうした点を踏まえて責任ある意見をいただきたい。言いたいことを言いっ放しにされて議論が中断することもあった。

Q 住民参加を否定した人が2割いることになるが、どんな人か。
A 割とはっきり主張する人がいた。
「これまでのままでいい(行政が行うべき)」という人、
「こういうことに金をかけるな」という人、
「この市長がやること自体嫌いだ」という人、
「今の生活で十分(ほかのことに関心がない)」という人
などである。
 (アンケートでは意見記入欄がなかったので、正確には同じ意見を持つ人の言葉を借りている。なお、「住民参加は行政の責任放棄」という投書や、「小田原評定、いつまでたっても決まらず時間の無駄」との投書もあった)

Q そのつど目標を明確にするとはどういうことか。
A 当初、敢えて住民の意見を聞くことに徹したが、議論が散漫になってしまい、同じ議論の繰り返しで時間をかかってしまった。最初に議論の進め方、次に計画案の出し方、といったように、毎回の目標(テーマ)を決めるべきであったと反省している。 (実際、住民参加の是非と具体的な道路計画の細かな案の議論が混在した時期があった。)

Q 一般住民の意見交換会と委員会との接点はあったのか。
A 委員会の委員は意見交換会で出席率の高い人が参加している。
  また、それぞれの会合で他方の会合の状況報告も行っている。

<参考>
住民参加の道路づくり委員会メンバー(24名)
 連合自治会推薦(沿道7地区)7名
 公募           12名(26名から選考)
 区内在住学識者    2名(道路、環境)
 市職員          3名(都市計画、道路、環境)

Q 最後のアンケートは何のために行ったのか。
A 横浜市としての方針を立てるために行った。

Q アンケートだけで決定して良いのか。
A アンケート結果と意見交換会や投書で得ていた情報とほとんど乖離がなかった。 また、複数案についてはどの案もほとんど同じ支持率であった。
(なお、方針はあくまでも横浜市が住民の意見を最大限尊重した中で、自らの責任で決定したものである。通常ならば延長7キロ、幅員22m−4車線とすべきところを 「延長7キロと幅員22m、車線は2を基本とする。また、恩田・すみよし台地区(起点付近)は透明性の高いプロセスで検討する」という異例な内容で方針決定している。)

Q 同じ支持率だとどれで決定するのか。
A この場合、技術的な視点で決定できる。
(なお、方針決定後も実際の整備方法に関する意見交換や計画決定に際しての公聴会も実施している。こうした公聴でのやりとりを通して、起点地区を残し、幅員22m−2車線という特徴ある都市計画決定に至った。)

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