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東京大学公共政策大学院 | GraSPP / Graduate School of Public Policy | The university of Tokyo

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アジアで学ぶことについて

渡辺俊平 (from Japan)

シンガポールにいったことに後悔はない。

日本人学生へ【アジアで学ぶことについて】

アジアで、アジアについて学んで欲しい。

我が国にとって現在大事な国・地域は、米国、中国そしてその他のアジアである。地理的近接性、歴史、経済的権益を考えればこれらの地域と本気でつきあうことをしなくてはならないのは自明である。我が国は、欧米へのあこがれに一つの区切りをつけ、アジアを学ばなくてはならない。アジア諸国から大勢の学生が集まるシンガポールで学ぶことで、アジアへの新しい視点を持ち、否定しがたいアジア諸国への軽蔑をぬぐい去ることは諸君の急務であると信じてやまない。アジアの学生はかなり優秀である。もう、東大生は勝てないところも多々あるだろう。それでいいのである。彼らへの尊敬と友情をシンガポール留学で培って欲しい。そのなかで、彼らとどうつきあって行くか真剣に考えて欲しい。アジアの学生と本気で議論を戦わせ、同じ釜の飯を食うこと通じて、中国は本当に脅威なのか、口数が多いことがある種の美徳となっているインド人とどうコミュニケーションをとるのか、東南アジアにおける日本の役割はこれからどう変わっていくのかといったことを悩み抜いてくれればそれ以上のことは無い。

【勉強について】

学生のバックグラウンドは多様である。国籍もそうであるが、職務経験の有無も含めて、十人十色である。このため、必修科目は誰にでも必要なスキルを広く浅く修め、政策分析に必要なツールを習得するということに主眼が置かれている。

独自性・専門性をつけるのは、政策分析演習(Policy Analysis Exercise、以下PAE)という卒業研究である。諸君が留学する頃には、PAEはクライアントについてグループワークをする新制度に移行するため、私のような経験を出来るかはわからない。とはいえ、この経験は記すに値するものとなった。私は、日本・シンガポールの二国間関係についての調査活動を行い、シンガポール外務省高官(大使、次官、大臣経験者)への取材を行った。その中で見えて来たのは、小国の外交のあり方であった。そもそも、私の取材に応じてくださった時点で見えてきたことが二つある。一つ目に、シンガポールにとって日本が重要なパートナーであるということ。他の国からであったら、取材に応じてもらえなかったとも言われた。二つ目に、政府高官といえども、偉そうな態度をとらないということである。小国は友好国を失うことが出来ないため、そういった態度をとるのだ。とはいえへりくだった態度を取るわけでもなく、我が国へ厳しい言葉を投げかけることで小国といえどもその誇りと生き様を見せてくれた。研究の成果の詳細は別の機会に述べるとして、この研究を通じて、日本外交に新しい知見を見いだすことが出来、またシンガポール外務省と一定の関係を持つことが出来た。そういう意味で、研究・人脈作り・スキルアップを行うことが出来、実り多い研究となった。

その他の選択科目も充実している。交渉やリーダーシップの授業はハーバード大学のスタンダードにのっとっているため、シンガポール国立大学の学費で受講できることはかなりお得である。また、国際関係の授業での議論はまさに国際政治の縮図である。ナショナリズムのぶつかり合いを肌で感じることが出来るのはこの大学院ならではである。

【シンガポールで学ぶことについて】

シンガポールは転換期に来ている。前回選挙で大量の票が野党に流れたことであらたな政治のあり方を示唆する動きが出てきたこと、経済成長だけではない価値観が生まれてきていることなどからわかるように、国家建設の時代は終わり、シンガポールのあり方に深みを持たせようとする時代に入ったことがわかる。シンガポールはこれから変わるだろう。いままでのシンガポールの象徴としてのリークアンユー初代首相が存命であるうちにシンガポールを見て、その後のシンガポールと比べられるようにするために、今すぐにでもシンガポールに行って欲しい。

語り尽くせないほど学ぶことが出来、両大学、両親そして支えてくださった友人への感謝はやむことがない。

すべての日本人学生に絶対の自信を持ってシンガポール国立大学リークアンユー公共政策大学院へのダブルディグリー留学をすすめたい。